当社は、古くから「金物・鍛冶のまち」として栄えてきた新潟県三条市の地で、「たんす家具や補強金具」からはじまり、「農業機械部品」さらに「ATMやプリンター部品」の加工を中心に、昭和24年の創業以来、大手メーカーの“下請け”町工場として地道に技術を積み重ねてきました。
リーマンショック以降、2011年5月に自社技術の“見える化”と“新たな社会への貢献”を目的に、一般に向けた「IF(=ISHIDA FACTORYの略)開発事業部」を立ち上げ「職人たちの技」と「カワイイ」を融合
させた『CANGAL(キャンギャル)』商品ブランドを誕生させました。
当社の最も核となる技術は、大手機械メーカーの金属部品の製造を通して培われた熟練の作業者による精密板金部品の加工です。ATMや金融端末の心臓部である紙幣や通帳が通る部分の部品は、特に高い寸法精度と品質が求められ、金属の板を1/100mm(ミリ)単位の寸法精度で切断して、曲げたり、穴加工を行わなければなりません。
金型製造・プレス加工・曲げ・溶接といった精密板金加工に加え、iPodの背面を鏡面研磨したことで有名な小林研業様から指導を仰ぎ、研磨技術のノウハウを得て今まで一般ユーザーの目にはなかなか届かなかった石田製作所のモノづくりが、手の中で輝く小さなハイヒールとなって集約されました。
“シンデレラのガラスの靴”をモチーフに、ピカピカに磨き上げられたステンレス製の『CANGAL(キャンギャル)』は、缶ジュースや缶詰を開ける時に「大切なネイルを傷つけたくない」いう“女性の声”から生まれました。
“ベンリ・カワイイ”をコンセプトに、美しい流線型のフォルムとディテールにこだわったデザインは、職人が37もの工程をかけ1品1品手作業で作り上げられます。そのため、1日の生産量はわずか4個。またネイリスト達による装飾は、それぞれの感性とセンスによりデザインは無限に広がります。
アクセサリー感覚で持ち歩ける実用的なプルタブオープナーです。
『CANGAL』は商標登録されました。(商標登録第546884号)
同社は、初のオリジナル商品である「ハイヒール型プルタブオープナー」を開発し、展示会での商品販売を5か月後に予定しておりました。創意工夫を凝らした商品を守るために相談された連携機関である一般財団法人燕三条地場産業振興センターより知財総合支援窓口を紹介していただいたことがきっかけです。
同社が開発した新商品を展示会に発表する前に出願手続を行うことが重要であり、優れたデザイン性を保護するため、意匠出願を提案しました。また基本のオープナーに装飾を加えることにより、様々なデザインを提供することが可能であることから、意匠のみならず商品名である「CANGAL」についても商標出願し権利化するようアドバイスしました。
同社は海外市場への進出を検討しており、外国出願に関する情報提供を行いました。さらに、新たに開発した「甘皮切り」について権利化するため意匠に強い弁理士を活用し助言を行いました。又、缶入りペットフード用のプルタブオープナーについても自社で意匠出願を行うなど、当初の相談時から徐々に知財に対する関心が高まり、現在知財の有効活用に結びついています。
同社はオリジナル商品の販売サイトや新商品パンフレットに、「商標登録」及び「意匠登録」番号を追記したことで、他社との差別化をPR できるようになりました。また、大手ブランドメーカーや商社とのビジネスの際には、その信頼性の意味に於いて権利取得が大きな役割を果たし“コラボ“展開につながりました。又、TV等の報道関係にも紹介され、更なる販路拡大に繋がりました。
知財に関する知識も経験も持ち合わせていなかった当社に対しても、知財アドバイザーから的確で丁寧なアドバイス・支援を下さり本当に感謝しています。窓口が遠方であったり、時間がとれず相談に行けない企業の方々も、訪問による支援を受けたりしながら、一緒に“日本のモノづくり”を盛り上げて行けたらと思います。今後の製品開発や海外展開についても引き続きのご支援をお願い致します。
大手メーカーの下請けからの脱却を機に「知財」の重要性に気付き、自社独自で申請し権利化を実現した企業様です。「CANGAL」をきっかけに、新商品の知財取得に積極的に取り組んでおり、また権利を有効に活用しております。今後の海外展開等、更なる発展に繋がるよう支援させていただきたいと思います。 (伊藤 里子)
職人の技と「カワイイ」が融合された開発商品(868.4 KB)
掲載年月日:2014年3月 5日
更新年月日:2023年7月 7日