当社は、粉体容器等金属製品の製作・販売を目的として2003年に設立しました。その後、自社製品として、果樹園で使用する器具や用具に特化した製品の製造販売を開始しました。主な製品は、果実採取機「もぎとりくん」、果樹の枝を曲げる「捻枝鋏」、梨園等の栽培棚の押し上げ機「ラックアップリフター」、果実収穫等「ワゴン・電動台車」などです。
企業理念は、「培ってきた知識・知恵と技術及び経験を活かしたものづくり」で社会に貢献し、「もっと楽に!もっと楽しく!」の行動指針の下、多々の要望を解決できるお客にとって必要な企業であり続けることです。
世の中のニーズを捉え、タイムリーに利便性の良い用具・器具を提供できること。常に現場の声を聴き、独りよがりの製品にしないこと。即刻試作に反映できること。試作後は現場に行き、さらに要望を取り入れ、改良した製品を提供できること。
茨城大学と共同開発した「温湯散布装置(ゆけむらー®)」は、この思想の基に制作し販売したものです。
販売戦略としては、ネットワーク「foryoumart」を立ち上げ、社長を先頭にスタッフ全員がセールスマンとして取り組んでいること。
■ ポール&リフター
アルミ製伸縮自在ポールにリフターをセットし、棚や主枝をらくらくUP。
■ 捻枝鋏
梨やリンゴの木の枝を柔らかいうちに折り曲げて、棚に括り付ける果樹捻枝鋏。
■ 温湯散布装置
50度の湯をイチゴの葉に散布し、病害虫に強いイチゴを育てるもの。ヒートショックといわれている。
■ アーチ型果樹摘果鋏(意匠登録第1454874号)
刃を湾曲した剪定鋏(写真参照)
社長は、茨城大学と特許許諾契約をしており、特許の重要性を認識されていました。梨やリンゴの収穫を初めとして摘果や摘花は腕を真上にして作業する必要があり、これを解決するために剪定鋏の刃を湾曲に曲げればよいことに気づかれましたが、余りに単純な形状なので、簡単に模倣される恐れがありました。そのため、模倣を防ぐべく早期に権利化するため専門家の力を借りて知財権の取得を試みたのがきっかけです。
実際の製品は、単に刃を90度に曲げたものなので、早期に権利取得できる実用新案で「先端部を90度に曲げたこと」を権利範囲として出願しました。ところが、90度では加工が難しく、45度程度でも機能的に満足することが分かりました。一方、実用新案を回避できる角度の異なる類似品が出回ることは明らかでした。そのため、類似品を抑え、侵害を予防する他の知財権がないかと相談を受けました。
実際に曲り角度の異なる刃の剪定鋏を制作し、観察してみると、見た感じが類似していました。模倣されたときは、その立証を必要としない意匠権があり、一方、模倣の立証を必要とする不正競争防止法もあることも説明しました。今回は、模倣の立証を必要としない意匠権を取得できないかを検討しました。一方、実用新案の登録公報が公開されていないのを確認できたので、意匠出願としました。又、意匠に係る物品(剪定鋏)の刃の形状に特徴があるので、「部分意匠」で出願し、湾曲率の異なる(小さい)剪定鋏をもカバーするようにしました。現在、模倣品は出ておりません。
実用新案のみでなく、その他の知財権も駆使して、自己の事業を防御することができました。ホームページ(foryoumart)やパッケージに実用新案や意匠番号の表示ができることから、宣伝ができ、販売量が増大しました。
特に、模倣されやすい製品は、目に見える知的財産権(例えば意匠権)による保護を図っています。
この案件は、実用新案のほかに意匠権も取得して、事業をカバーできたものです。他の知財権の取得も考えてください。
事業にリンクした知財戦略を考えておられる企業様はご一報ください。
(齋藤 幸一)
刃先を湾曲に曲げた剪定鋏(意匠)(831.2 KB)
掲載年月日:2016年1月20日
更新年月日:2021年3月22日