当社は、「牡丹鍋」で有名な中国山地の東端に位置する兵庫県丹波市にある有害鳥獣の動物捕獲檻専門メーカーです。イノシシ、シカ、サル、アライグマ、ヌートリア、ハクビシン、カラス等による農林水産物の被害は農林水産業者にとって死活問題となっています。農林水産物の被害だけでなく、国宝の正倉院がアライグマにより引っかき傷をつけられた等の、文化財に対する被害も報告されています。これらの被害に対応するための捕獲檻を提供しています。
当社は、使用者の安全、捕獲率の向上、輸送・運搬の軽減、簡便な組み立てのできる製品をモットーに改良、開発に取り組んでいます。自社のアイデアに基づく試作品、その使用経験を通じて、改良点を洗い出し、現場の要求に最もマッチする製品を提供することを常に心がけています。
当社は、アライグマ・ヌートリア・ハクビシン等を対象とした小型動物捕獲装置および駆除装置、イノシシ捕獲装置、イノシシ・鹿両用捕獲装置、サル・カラス兼用捕獲装置等を製造販売しています。
そのなかで、先に当社が取得した特許第5818221号を基に改良したイノシシ檻は、設置時には従来品と変わらない大きさを確保しながら、約半分の長さの梱包で輸送運搬できる特徴をもち、捕獲したイノシシの暴走による事故を回避できる仕組みを組み込んだ新しい製品です。当社の捕獲檻は、設置現場で工具を必要とせず、通常2人で、約10分程度で組み立てられることも大きな特徴です。
同社は、新しく開発した製品が他社の特許等に抵触していないかを確認するため知財総合支援窓口に来訪されました。
同社は、動物捕獲檻の開発を専門に行いながら、常に現存する課題解決のためのアイデアを実施検証しています。組み立ての簡便さ、組み立て時の作業者の安全確保等とともに、輸送・運搬の簡便さと捕獲動物の処理における作業者の安全性確保といった一石二鳥のアイデアに基づく試作品について知財保護の相談がありました。
同社は、試作品を展示会に出展する計画があることがわかり、出願を急ぐようアドバイスしました。そして、複数の取引先から、試作品の開示を求められている状況もあり、出願と同時に早期審査請求することと、審査請求にあたり、減免制度の対象になることをアドバイスし、特許査定に至りました。
同社は、経営者が新しい発想で多くのアイデアを出され、そのアイデアの保護と先行技術の調査支援を気軽に窓口に相談されます。知財が、自らの事業を守るためだけでなく、取引先との信頼関係の構築、顧客への安心保障になっていることを十分認識された上で、事業活動を展開されています。ここで紹介した捕獲檻は、市場でも注目を集めており、取引が本格化すれば一社では対応しきれなくなり、ライセンスするなど地域一体となった取り組みが必要となることも予想され、特許の効果が大きく認識されると思われます。
知財総合支援窓口は知財を活用した事業化に関する相談ができ、知財を事業活動に如何に生かしていくかの貴重なアドバイスも受けることができました。
本事例は相談を受けたときに、すでに、試作品が出来ている状況であり、現物を見ながら、専門家の意見も交えて知財保護の考え方をアドバイスしたものです。この案件は全国へ普及する可能性を秘めた製品であり、窓口担当者としても期待しています。 (日裏 久英)
特許出願支援から活用(271.7 KB)
掲載年月日:2017年1月10日