北本市は、埼玉県のほぼ中央に位置し、東京都への通勤率が高く、江戸幕府による宿駅整備以前の1602年(慶長7年)まで中山道の宿場、鴻巣宿があったことで知られています。北本市の名所・旧跡としては石戸城跡、東光寺などが知られ、観光スポットとして桜の名所である城ケ谷堤があり、東光寺の石戸蒲ザクラ(写真)も日本五大桜の一つとして有名で、さくら祭りが毎年4月に開催されています。また、毎年11月に開催される「北本まつり」の「宵まつり」には伝統のお囃子が響くなか扇型の「源範頼ねぶた」などの大小さまざまなねぶた山車が通りを練り歩きます。
北本市観光協会は、北本市の観光によるまちづくりを推進することを目的とし、その目的を達成するために(1)観光の振興を図る活動、(2)まちづくりの推進を図る活動、(3)学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動、(4)経済活動の活性化を図る活動等を掲げて活動しており、観光振興活動としては、さくらまつり、北本まつり(宵まつりの写真)、きくまつり、ふるさとまつりなどの地元で開催されるイベントの支援や、北本トマトカレーの事務局など観光振興事業として取り組んでいます。
「北本トマトカレー」(写真)は、2011年11月に行われた「第9回埼玉B級グルメ王決定戦」において一番おいしいB級グルメとして初優勝を飾り鮮烈なお披露目を果たし、一躍北本市のご当地グルメとしてその名を轟かせました。その後全国の数々のコンテストに優勝・入賞し、その人気は急上昇中です。そして「北本トマトカレー」は、2016年7月には地域団体商標として登録(権利者:北本市観光協会)されており、レトルト品や山崎製パンとのコラボ商品としても販売されています。
「北本トマトカレー」が埼玉県ご当地カレーとして有名になるにつれ、地域ブランドとして権利化し活用できないかと考えるようになり、地域団体商標としての出願の可能性やその出願方法等について情報を得るために知財総合支援窓口に問い合わせをしたことが、窓口活用のきっかけとなりました。
最初の相談は「ご当地グルメについて自力で地域団体商標を出願したいのでアドバイスして欲しい」という内容でしたので、地域団体商標の要件、周知性等確認し、それらの必要性等概略説明し、できれば弁理士に依頼する方が望ましい旨アドバイスしました。、準備資料を持参して弁理士の意見も聞きたいとのことでしたので、窓口に配置されている専門家(弁理士)による専門相談に繋ぐこととしました。
専門相談では登録可能性、必要書類、登録までの期間、代理人契約をして弁理士に依頼する場合の費用等の概略アドバイス、登録後の管理等について助言すると共に、特許庁の審査では地域との関連性や指定商品・役務の記載方法がポイントとなること、地域の名称に関連する証明書類等に一部不明瞭な点もあるため、できれば弁理士に代理人として依頼した方がよいこと、地域団体商標取得がゴールではなく登録後もブランド力を高めることなどをアドバイスしました。
相談後に地域団体商標を出願するまで約半年の準備期間をかけて、個別に弁理士と代理人契約をして出願を行い、出願から約1年後の平成28年7月に登録を受けることができました。今後も北本トマトカレーの会と協力してブランド保護とPRを図っていきたいとのことであり、知財権を活用してブランド力を向上していくという意気込みが強まりました。
観光協会の通常業務において知財はほとんど関わることがないと思っていましたが、一つ間違うと他者から権利の侵害・警告を受けますし、あの時権利化を図っていれば有効に活用できたのにと考えるのが知財ではないでしょうか。知財総合支援窓口では専門的な内容等について分かりやすく説明、助言を受けることができましたので、知財に関して疑問や問題等ある場合には支援窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
北本市観光協会は「北本トマトカレー」が有名になるにつれ、このブランドを活用していこうという思いから地域団体商標の重要性にいち早く気付き、その権利化を実現しました。商標はブランド力を高めていく上で大きな役割を果たします。今後とも地元企業の活性化・地域ブランドの育成等に知財を活用していかれることを期待しています。 (菊池 知丸)
「北本トマトカレー」が地域団体登録商標に(234.1 KB)
掲載年月日:2017年3月27日
更新年月日:2022年1月 4日