当社は、塩害によるコンクリートの早期劣化問題、石炭灰の埋立てによる環境問題の改善を目的とした、コンクリート混和材である加熱改質フライアッシュ関連製品の製造・販売を行う会社です。
鉄筋コンクリート構造物の寿命は40~50年程度と言われますが、塩害の厳しい沖縄では20~30年で激しく傷み、修繕が必要となることも珍しくありません。そのため、コンクリートの耐久性向上・長寿命化に関する検討は、沖縄に限らず全国各地の研究機関で行われてきました。
当社では、大分大学などで基礎的研究がなされた、石炭火力発電所において生成される微細粉粒状石炭灰であるフライアッシュを用いたコンクリート混和材の実用化に成功しました。それを受けて、現在に至るまで公的機関が実施するさまざまな事業にも採択され、とりわけ、平成27年には沖縄県及び県内金融機関などの共同によりものづくり企業への資金供給、成長支援を実施する「沖縄ものづくり振興ファンド」の出資企業に採択され、さらなる製品研究、生産技術開発を進めています。
当社が製造する加熱改質フライアッシュは、フライアッシュに含まれる、燃え残り炭素分である未燃カーボンを独自開発技術で1.0%以下に除去したコンクリート混和材です。生コンクリートに加熱改質フライアッシュを混和することにより、単位水量の低減、ワーカビリティの向上、ポゾラン反応による長期強度実現、アルカリ骨材反応の抑制などの効果が得られ、ひいてはコンクリート構造物の高耐久・長寿命が実現できます。
県内外において住宅、商業施設、公共建築物、道路・橋梁工事など、数多くの加熱改質フライアッシュを用いたコンクリート構造物が建設されています。
同社では加熱改質フライアッシュの販売を進めていくうちに、コンクリートの性状・耐久性は、フライアッシュの粒子の大きさが影響することが確認でき、そのため、製造工程においては、粒径に応じて分類することが重要となるため、フライアッシュを効果的かつ容易に粒径に従って分別できる分級装置を開発したので、知的財産で保護できないか検討したいということで、窓口に相談に来られました。
当該装置の概要のみならず、開発に至った経緯、同社を取り巻く経営環境などについてもヒアリングし、特許を中心にした知的財産制度の詳細について説明しました。当該装置の権利化に向けた公知技術を把握するためだけでなく、他社の技術動向を把握するためにも先行技術調査は重要である旨説明しました。
それを受けて、派遣専門家訪問を活用して、分級装置及び新たに開発した新型加熱改質装置について、先行技術調査で得られた公知技術に対する当該装置の技術的相違点についてディスカッションすることにより、発明を抽出することができ、専門家から登録可能性についての助言を受けました。
また、専門家が日本弁理士会知財経営コンサルティング委員会副委員長であったこともあり、経営に直結する知的財産活動について助言を受けることができ、基本特許の買収や社名変更など経営安定化も実現することができました。
その後、新型加熱改質装置に関する発明に関して、内閣府沖縄総合事務局委託「地域中小企業知的財産支援力強化事業」に応募し、採択され、特許出願を行ったところ、先日、特許査定を受けることができました。また、当該特許出願について、外国出願も検討し、沖縄県委託「外国特許等出願助成金」に応募したところ、採択され、現在はPCT出願の準備を行っています。また、並行して分級装置に関する発明についても特許出願を行い、特許査定を受けることができました。
並行して、加熱改質フライアッシュの海外展開も視野に入れ、独立行政法人国際協力機構の支援を受けてアルゼンチン、パラグアイへ視察・調査に赴いたところ、実現可能性を確信することができ、現在は、具体的な検討に着手しているところです。
今回、沖縄県知財総合支援窓口に相談に伺い、専門家の紹介や補助金の活用についてアドバイスを戴いたことで、初めての特許取得という大きな一歩を踏み出すことができました。人材など経営資源の限られた中小企業にとって、幅広い情報の獲得や、外部人材の活用のきっかけとなる窓口はとても有意義だと思います。
当該発明に関する知財活動をきっかけとして国内だけでなく海外市場への事業拡大につながるものであると期待しています。今後も、製造設備、生産技術などの研究開発も含めた技術革新にチャレンジして戴きたいと思います。 (髙坂 正登)
微細粉粒状石炭灰(フライアッシュ)の加熱改質装置及び分級装置に関する発明の出願検討(256.3 KB)
掲載年月日:2017年3月27日