当社は、仙台市の水甕、釜房湖の湖畔に設置された東北一の規模を誇る国営みちのく杜の湖畔公園のある宮城県川崎町に主要工場を擁し、プラスチック成形や、それに関連する各種金型や装置の製造販売を業とする企業です。また、近くには樹氷やスキーで有名な蔵王山もあり、風光明媚な場所で日々の業務に取り組んでおり、国内海外を問わず激化する競争の中で、「創意工夫と挑戦」を合言葉に、いかにしてより高い付加価値を生み出し、他者に先んずるか、鋭意努力しています。
当社の得意分野は、プラスチック成形に用いる金型の設計・製作と、その金型を使用するプラスチック成形品です。前者においては、射出成形用の小ロット金型、試作金型、インサート金型、スライド方式、ホットランナーなどのあらゆるニーズに対応可能です。また、後者においては前記の技術を応用した、機構部品や外観部品の射出成形を中心に、お客様のご要望に対応しており、その他、ブロー成形品などを含めて、大量生産にも多品種少量生産にも対応可能です。
当社はこれまで培ってきた、射出成形・ブロー成形におけるワークのハンドリング技術を応用した容器供給装置を開発しました。本装置は、一台の装置で、形状やサイズが異なる積層された容器を個別に分離して取り出し、容器の内容物を充填する装置へ供給するものです。適用分野としては、(1)スタック状の容器を一個取りする作業 (2) 調理?・弁当・惣菜・生食・冷凍食品等のパッケージングなどが挙げられます。また、プロトタイプが既に県内の企業で稼働中であり、本装置の主要部について特許出願し、本年5月に登録査定を受けました。(特許第6150234号)
当窓口は県内の様々な支援機関と連携して地域の企業の支援に取り組んでおりますが、その連携機関のひとつである公益財団法人みやぎ産業振興機構は、補助金などの分野で同社を支援しています。同社で開発した本装置に関する特許登録の可能性について、みやぎ産業振興機構の担当者が当窓口に対して問い合わせたのが、同社の窓口活用のきっかけです。
窓口から同社に連絡した時点で、特許出願のための、特許請求の範囲・明細書・図面の案が既に作成されていましたが、発明の特許要件として最も重要な新規性については未確認とのことでした。そこで、試作品を参照しながら出願案について説明を受けた後、試作品の構想の段階で先行技術調査が必要であることと、J-PlatPatを用いた具体的な調査方法を説明しました。
その後、窓口から提案した、テキスト検索、特許分類検索の検索式の例に基づいて、同社で調査を行った結果、同一・類似技術は見出せませんでした。そこで、既に作成されていた出願案に基づき特許出願することを窓口が支援しました。この出願案文はかなり完成度が高かったのですが、一部に曖昧な表現があるなど検討を要する箇所があり、修正方法について助言しました。また、事業化を急がれておられたので早期審査制度の利用についても支援し、出願から1年弱での登録査定となりました。
同社は、これまで特許出願を3件、実用新案登録出願を1件行っていますが、手続をすべて特許事務所に一任していたため、技術開発に際し、構想、試作、商品化などの各段階で必要な先行技術調査を行うことに関しては、必ずしも十分な社内対応ができていなかったと思われます。今回の支援で、産業財産権への取り組み方に関する意識を変えて頂けたと考えています。
従来から認識してきたことですが、今回の窓口の支援で、新製品・新技術の開発に取り組む際には、構想の段階から、該当する分野の技術動向などの把握が必要であり、これを確実に行うことが、開発の効率化と成果物の権利化に繋がることを改めて実感できました。未だ窓口を利用したことがない方には、知的財産に関することは、何でもご相談することをお勧めします。
同社はプラスチックの成形に関して、様々な技術を保有していますので、今後もそれらを権利化して競争力の源泉とすることが可能と思われます。また、今回は特許出願のみの支援でしたが、商品のデザインやブランド化などについても、多彩な支援メニューを用意していますので、今後もご相談ください。 (片平 忠夫)
自動容器供給装置の特許登録支援(228.3 KB)
掲載年月日:2017年8月 7日