当社(けんちくや前長R)は、栃木県那須烏山市を拠点に、木組みの家づくりを続けている工務店です。この地域は八溝杉という美しい杉の産地でもあることから、地元産の杉を使った、「伝統的な大工の技を活かし、今の暮らしに合った住まい」、「長期優良住宅」、に取り組みながら、地元のお客様に対して、和風木造住宅を施工・販売しております。
当社は、樹齢60年以上の杉を、時間をかけて自然乾燥させることで、艶やかで粘り強い無垢材にします。無垢材は、反りや曲がりが出るため扱いにくい、とも云われますが、当社の大工棟梁はその癖を読み、活かすことが出来ます。その大工の技と、地元にある自然素材や工芸品で作られる伝統的な木組みの家、そこに、現代の暮らしに合った間取りや、設備を組み合わせる木の家こそが、当社の和風木造住宅です。便利さ、安さ、流行りの追求だけでは無く、心の豊かさ、居心地の良さを感じる家であることを、大切にしています。
「和風木造住宅向け真壁パネル(工法特許及び意匠で保護)」 (特許第6010799号、意匠登録第1544922号)
当社が、栃木県の支援を受けて開発した和風木造住宅向け真壁(柱を露出させる住宅の壁の構造物)で、木の質感を活かしながら地震の揺れや屋根の荷重に強い耐力壁です。家屋等の建築物における柱間、梁、土台間で囲まれた軸組内に、高い精度で設置することができる、ユニット式耐力壁パネルです。また、格子形状と板形状の2種類があり、木材のめり込み性能をうまく活かすことで、伝統構法の粘り強さを残しながら大壁工法並みの初期剛性を有し、建築基準法規定告示仕様の壁に比べ3~5倍高い壁倍率(地震への抵抗力を示す)で、国土交通大臣からの認可を受けております。
同社は、従来、木組みの家づくりを続け、地元産の杉を使って伝統的な大工の技を活かし、今の暮らしに合った住まい作りに取り組み、和風木造住宅を施工・販売しております。近年は、木の質感を活かした地震などにも強い和風木造住宅向け真壁パネルの開発をすすめており、さらなる施工体制の強化と共に、他社に対する差別化及び知財保護戦略の構築を図ることが必要となっていたことから、窓口へ相談に来られました。
同社からの最初の相談は、①建築用壁材の技術開発動向調査及び、和風木造住宅の他社先行技術文献調査の方法について、②当該技術開発動向調査及び他社先行技術に基づく、自社技術の独自性の見極め及びさらなる改良技術開発のすすめ方について、でした。
同社に対してはその後、知財総合支援窓口登録専門家(弁理士)等と協働して、①独自技術ポイントを的確に捉えビジネス展開において有効的に活用できる知財の取得方法、並びに特許/意匠の権利化について、②同業他社とのさらなる差別化を図るための、自社ブランドの構築に向けた商標権の取得及び活用について、の支援を行いました。
知財総合支援窓口に相談することで、知的財産に係わる意識の向上を図ることができたと思います。同社の将来にわたっては、既存住宅の施工・販売で終わることなく、住宅用部材の開発と同時にその開発品の施工・販売をする一方で、計画的な知的財産の保護活用を構築しておく必要があり、この意識向上の大きなきっかけとなったと思います。
今回相談させていただいた内容は、知財の取得に関することでした。実際の知財総合支援窓口担当者からの対応は、特許/意匠/商標の調査方法、事前に検討すべき項目に対する助言、特許/意匠/商標の出願手続から権利化に至るまでのこと等を指導いただきました。知財総合支援窓口を利用することで、適切で的確なアドバイスを頂き、本当に有難うございました。
同業他社とのさらなる差別化を図るため、自社ブランドの構築に向けた商標の取得並びに和風木造住宅向け真壁パネルに係わる特許/意匠の取得を実現し、他社に対する差別化及び知財保護戦略の構築については達成しつつあります。今後は、真壁の施工拡大をはかる中で、さらなる製造力強化及びコスト低減に向けた特許情報などの利用についての支援を継続していきます。 (斎藤 秀夫)
地場産木材利用家屋の施工販売に係わる知財ミックスの構築及び活用について(290.4 KB)
掲載年月日:2017年9月 5日
更新年月日:2022年7月29日