当社は、土木・建築に関する構造物を扱う設計と測量を専門とする会社で、特に、道路・河川・その他一般土木・農業土木・下水道をはじめとする設計業務や、基準点測量・地形測量・路線測量等の測量業務を行っています。日本国内には、多くの測量業、建設コンサルタント業に従事する企業がございますが、当社は、他社にはない技術の提供を念頭に、平成23年設立以来、数年に亘り、構造物の力学的性質について研究を行っています。
今年9月に擁壁の安定性評価に関する特許を取得し、今後は本業に加えソフトウェア開発・販売を新たな経営の柱にすべく地域の企業とも連携し、大洲市ならびに愛媛県の活性化に貢献していきたいと考えています。
土には、土圧という見えない力が生じます。宅地造成や道路改良工事において、擁壁は必要不可欠な構造物ですが、擁壁の設計では、この土圧を用いて最適な断面形状が決定されています。この土圧に関して、当社が作成した論文が今年5月に土木学会論文集に掲載されました。その論文では、長年の間、未解明であった事象における土圧計算式を解明しており、このことが、多くの技術者から高く評価されました。このように、当社は、常に社員一人一人が日々の業務を通して、いかに社会貢献できるかを考えており、また、学会への論文の投稿を通じて、土木工学における学術・技術の進歩、発展に寄与できるよう心掛けています。
当社が手掛ける擁壁の設計には、取得した擁壁の安定性評価に関する特許技術(擁壁の土圧評価方法、擁壁の安全性評価プログラムおよび安全性評価システム)が使われています。擁壁の設計に用いられる土圧について、試行計算を行って最大土圧を算定する従来法に対して、この計算システムを用いることで、直接的に最大土圧を算定することを可能となります。この効果により、土圧算定の際に、従来までの技術者によって異なる解を算出し得るようなファジィ的要素を取り除き、誰もが正確な解を算出できるため、算出解に信頼性が生まれ、品質の高い成果を提供することが可能となります。
同社は土木に関する新しい数式を発見され、特許取得の可能性を視野に入れていましたが、数式だけでは権利化できないことを知り落胆されていました。そのような中、インターネットを通じて知財総合支援窓口を見つけられ、弁理士による専門家相談会を予約、相談されたのがきっかけでした。
同社より「新たな数式を導き出した。土木学会への論文発表の準備もしている。この数式の発見を特許として権利化し、活かす方法はないだろうか?」との相談内容がありました。弁理士より「数式そのものは特許にならないが、数式を含んだ物または方法の発明になるのであれば特許の対象になりうる。」との回答があり、新たな数式を利用した擁壁計算システムとして、特許出願することを決意されました。
同社が特許出願のポイントを再検討後、明細書の記載事項・ストーリーの大切さを説明する等、明細書作成過程での質問に知財総合支援窓口にて対応し、請求項の記載内容・組立て等については専門家(弁理士)による常駐相談・専門家派遣を活用して出願を完了し、早期審査の拒絶理由対応では審査官への質問で対応の方向性を判断することを提案しました。その後、特許査定が出たため、登録の手続き支援をし、無事登録となりました(特許第6210524号)。
同社では、今回、出願・審査請求・拒絶対応と一通りの対応を経験されたことで、明細書のストーリーの重要さの理解、拒絶理由通知書での拒絶理由に書かれた審査官見解を読み取ることの重要性について理解を深められたと感じます。また、今回の出願内容による同業他社との違いをセールスポイントに事業の拡大を図られています。
知財総合支援窓口に相談することで、特許出願の取得方法を一つ一つ丁寧に教えていただけるだけではなく、特許に関する助成金の紹介等の支援も受けられます。今回のように取得が不可能と思っていた事案でも、支援してアドバイスをいただいた結果、特許取得の手法に変化をつけることで、取得が実現のものとなりました。皆様にも是非、窓口の活用をお勧めします。
今回の相談内容は、公共事業や災害対策等の土木工事における擁壁設計の土圧算定の精度向上と算定時間の大幅な短縮を実現するもので、今後の国土保全事業に必要性の高い技術であると考えます。今後は、事業発展のために権利の有効活用が出来るよう関係者と連携をして支援を継続したいと考えています。 (堀田 雄二)
擁壁計算システムの特許出願(408.1 KB)
掲載年月日:2017年10月18日