当社の主要事業所は、日本有数の穀倉地帯である、宮城県大崎地方の中心に位置する大崎市にあります。大崎市内の岩出山は、仙台藩の藩祖である伊達政宗が、居城を構えていた時期があります。現在の大崎市には、電子機器工場や精密機械工場も立地しており、農業も依然として地域の産業の中で大きな位置を占めていますが、就業者の減少や後継者不足は他の地域と同様に大きな課題となっています。このため、省力化が各方面で必要であり、当社は、畜産設備などでこのような課題解決に貢献しています。
当社の主な事業は、畜産設備に関する技術アドバイス・設計・製作・設置・サポート・プラント工事・畜産機器・製造販売・メンテナンスです。
当社は、前記の業務について、豊富な経験と実績を有していますので、お客様の要望に的確に対応した、最適なシステムの提案や設置工事を行っています。また、納入した施設を高効率で、長期間運用するためには適正なメンテナンスが必要です。当社は、修理・改修・部品の交換などの様々なサービスも適宜提供しています。
近年、様々な分野で環境への負荷低減の要求が高まっています。農業も例外ではありませんが、他の産業に比較すると農業は循環型社会への適応が容易で、当社は、生ごみや家畜の糞尿などの廃棄物を堆肥化し再利用する仕組みを提供しています。これについて、当社が永年に亘って培ってきた技術を特許出願した結果、特許第6283789号『攪拌装置及びそれを用いた堆肥製造装置』として登録されました。当社は、今後この特許技術を活用し、循環型社会のさらなる構築促進に貢献したいと考えているところです。
同社は、自社の堆肥製造装置に用いられる攪拌装置の一部に、ある企業の複数の特許権に係る技術を利用していましたが、当該特許権を保有しているその企業が倒産したため、特許権の帰属が曖昧になり、どのように対処すべきかを相談するために来訪したことが、窓口を利用したきっかけです。
J-PlatPatを用いた当該特許権の現状の確認方法について助言するとともに、相談者の製品と当該特許権の関係を改めて精査するために、当窓口の専門家(弁理士)も活用されました。その結果、既に権利が抹消されているものがあり、まだ権利が維持されているものは、同社の製品とは無関係であることが明らかとなり、問題なく業務を継続できることになりました。
同社はこれを契機に、事業の継続的な維持・発展には知的財産権に注意を払う必要性があることを認識し、まず、現在使用している技術が他者の権利を侵害していないか確認するため、先行技術調査の方法についてご相談をいただきました。ご自身での調査の結果、他者権利の侵害はなく、むしろ、自社の技術の中には、特許登録の可能性を秘めた独自のものがあることが判明したため、特許出願し、今般の特許登録に至りました。
同社における特許出願から登録までの経験は、自社の技術開発の構想・試作・商品化の各段階で、他者権利との関係や業界における立ち位置を明確にし、その重要性を改めて認識しました。
また、自社の技術を1件の特許登録だけで保護するのは、困難であることも認識するに至り、今回の特許登録になった技術についても、周辺技術の権利化を検討した結果、さらに1件の特許出願を行いました。
従来から、ある程度認識していたことですが、他者権利の現状を正確に把握しておくことが、顧客に対して持続的なサービスを提供する上で、極めて重要であることを改めて実感しました。また、先行技術調査により、技術開発の指針が得られ、特許登録に繋げることができました。未だ窓口を利用したことがない方には、知的財産に関することは、何でもご相談することを推奨します。
同社は、畜産設備に関し多様な技術と経験を保有されているので、今後もそれらを権利化して競争力の源泉とすることが可能と思われます。また、今回は先行技術調査と特許出願のみの支援でしたが、同社の製品には、今後デザインが関係する可能性もありますので、ご相談ください。 (片平 忠夫)
『攪拌装置及びそれを用いた堆肥製造装置』の権利化の支援(209.5 KB)
掲載年月日:2018年5月 2日