1999年に創業した、メインとして「イカ釣り専用擬似餌」の製造を行っている会社です。金型製作・部品製作・CAD/CAM 加工・製品組み立て・製品梱包に至る「全工程」を一貫して生産することができる「町工場」です。特に新製品のリリースに関しては、近隣で展開している「ダイレクトショップ」で公開・販売を行うことで、売り上げ予測を可能にしています。また、地元の凄腕イカ釣り漁師や釣り人との連携を大切にしており、社内はイカ釣りに関するスペシャリスト揃いです。地元高専や大学との連携も深く、理学的、あるいは工学的な観点から「イカを深く知る」ための研究を日常的に行っている点が特徴的な会社です。
小規模ではありますが、金型製造に要する加工機械を整備して、プラスチック成型・付属品の加工・塗装に関しても、特殊な専用機器・設備を保有しており、製品企画から製品リリースまでは一貫生産であるため、開発スピードがコントロールできます。
同業他社がコスト高を理由に撤退した技術の再構築の商品が功を奏しており、いわゆる昔ながらの製造方法で製作された商品の固定客の信頼は厚いと思われます。
常にコスト削減や難易度の高い技術への挑戦を行っており、積極的に公的機関の補助事業を活用しています。
・玄界灘に面した呼子町で有名なイカ「呼子イカ」である「ケンサキイカ」を釣るための餌木(擬似餌)と、網を用いた漁法でなく、1杯ずつ釣るための漁法で使用するイカ用ルアーです。写真は主力製品のひとつである「早福型:商標登録第5985542 号」
・釣り上げた「イカ」を収納する専用ケースです。釣用クーラーボックスで使用した場合の欠点を検討して、鮮度保持を大切にして熱伝導解析の上で設計したスタック可能なアルミ合金製の製品です。「イカ用トロ箱:意匠登録第1589286 号」
同社は研究開発型企業で、開発技術は特許事務所へ相談されて出願を行われており、また、公的機関の補助事業を活用されていました。このため、知財関連の説明会等へは出席されていることも多く、当窓口がそこで事業PR を行っていた際にお目にかかったのがきっかけです。その際は、先行技術調査のための特許情報プラットフォームの活用方法についてご紹介しました。
「他社製品が自社の特許を侵害している可能性が高いので、対応を指導して欲しい」との相談があり、当窓口専門家の弁理士への相談を勧めました。その助言を参考に、抵触の有無の判断や対応方法等を検討しました。また、未出願である他商品の権利取得の可能性について、相談に対応するとともに、意匠制度・商標制度・著作権についての制度説明を行いました。
主力製品の商標登録数件の出願相談があり、制度説明・商標登録願の作成指導を行いました。特に、社名ロゴの出願に関しては、指定商品・指定役務に関して詳細な検討を行いました。
また、開発中の製品に関しては、商品の特性上、意匠登録出願を勧めて、図面作成等から自社での出願を行われました。
窓口の活用を通じて、知財に関する興味や理解が向上されており、結果的に法律事務所と顧問契約を結ばれ、職務発明の内容を含む社内規定の整備や、他社との秘密保持契約についても商品開発の一環として取り組まれています。
主力製品は、意匠登録・商標登録を行った上でネット販売されており、海外での売り上げ・引き合いも増えてきたとのことで、高品質であることが口コミ等で海外まで広がったと思われます。この好況を受け、海外での商標登録も検討されています。
さらに、本年度は外国出願補助金を活用されて出願を行われる予定です。
窓口の活用前は、特許等の取得に関する事は弁理士事務所に依頼を行ってきましたが、取得した権利内容を把握していませんでした。窓口担当者から知財に関する制度や取得手段の説明を受けることで、権利取得後の活用について検討を行い、出願を行うかノウハウとして秘匿するかの判断が行えるようになりました。また、新商品の開発に関する補助事業の申請に関しては、知財の取得計画・開発経緯等を参考にしています。
釣漁具製造としては、1999年創業の若い会社ですが、経営者・開発者は重要事項に関して、タイムリーにご相談いただいています。引き続き、知財専門家と協働して、ワンストップでの対応を行いたいと思います。また、自社で推進されている知財管理体制の整備に関しても期待しています。 (塚島 誠一郎)
開発型企業の総合的な知財支援(549.5 KB)
掲載年月日:2019年7月11日