窓口支援事例
250年の伝統工芸ブランドを個人で守る
企業情報
- 所在地
- 福岡県福津市
- ホームページ URL
-
https://tsuyazaki-ningyo.club/making-and-activities
- 設立年
- 1777年
- 業 種
- 製造業
- 従業員数
- 3人
- 資本金
- -
企業紹介
当工房は、江戸時代後期の1777年から約250年にわたって津屋崎(現:福岡県福津市)で、素朴さと鮮やかな色彩が特徴の土人形である津屋崎人形を代々受け継いでおり、現存する唯一の津屋崎人形工房です。7代目夫妻と8代目の3人で、創業以来の「二枚型手押し製法」で一点一点手作業による人形づくりを続けています。津屋崎人形は「福岡県特産民芸品」に指定されています。
相談のきっかけ
相談のきっかけは、第三者による「津屋崎人形」の使用があり、自社のブランドとして保護する必要性と、買手が安心して買えるようにすることが作り手の義務であると強く感じたことにあります。代々継承してきた原田家のブランドである「津屋崎人形」を、次代に確実に継承することを目指し、8代目人形師の原田翔平氏による商標登録をINPIT福岡県知財総合支援窓口が支援しました。
支援概要
「津屋崎人形」は、地域名と商品の普通名称のみからなる商標のため、一般的には地域団体商標としての出願が想定されます。しかしながら、全盛期には四軒あった人形工房も現在では当工房のみが伝統工芸を守り続けている状況を踏まえ、あえて個人である原田翔平氏を出願人として商標登録に臨むことを助言しました。
出願にあたっては、標準文字の「津屋崎人形」を商標として選択しましたが、審査の過程において、品質等を表示するにすぎないとの拒絶理由通知を受けました。これに対して専門家(筒井宣圭弁理士)からの助言を踏まえて支援しましたが、拒絶査定に至りました。その後、査定不服審判の請求を助言し、240年以上にわたる制作の歴史、新聞・出版物の掲載実績、各種展示会への出品実績などの資料を提出することで、「津屋崎人形」の名称は原田家が生産・販売する人形と強く結びついているとの主張・立証を支援しました。
支援成果
審理の結果、「津屋崎」が有名な観光地等として取引者・需要者に広く認識されているとはいい難い点に加え、「津屋崎人形」は原田家先祖代々より受け継がれてきた土人形の名称であり、原田家以外に当該名称を使用している者が確認されないことなどが考慮され、特定の者による独占使用は公益に反しないとの審決を受け、登録に至りました(登録6924426)。現在、日本各地には、「津屋崎人形」と同様に地域名を冠した家内工業規模の伝統工芸品が多く存在しており、法人組合等を持たない伝統工芸家にとって良い先例になりました。
今回の支援により「津屋崎人形」の自社ブランドを保護できたことで、8代目から新たに始めたネットやメディアによる広報活動や、各種イベントでの絵付体験教室の開催等の認知度向上の取組を安心して推進できるようになり、ブランド価値の一層の向上に貢献しています。
企業コメント
今回の商標登録では、争うための剣ではなく、「無用な争いを回避する盾」を手にしたと思っております。人形師として私が目指すのは、良いものを作り、それが世に認められることです。しかし、「津屋崎人形」という言葉が広がれば、そこに責任も生まれていきます。購入される方の安心感を担保した状態で今後の製作に打ち込めることに、ご支援いただいた亀井さんや筒井先生、特許庁の判断に感謝の気持ちでいっぱいです。
窓口担当者コメント
「津屋崎人形」のブランドを自ら守ろうという強い意志を持った8代目人形師の原田翔平氏の執念によって実現された成果だと思います。歴史のある伝統工芸を確実に次代につなぐ環境が整い、今後のますますの発展を祈念します。
(亀井 英徳)
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掲載年月日:2026年3月16日