過去の経験を教訓に。営業秘密管理体制を再構築
当社は、各種昇降機械、パレタイザ、マテリアルハンドリング(マテハン)ロボット等の基幹機種を製造し、国内外で販売しています。知的財産に関しては、特許権を中心に、職務発明規程の運用等も行なっています。過去に、従業員が退職して類似製品の製造・販売を行う会社を設立し、特許出願も行ったという悩ましい事例がありました。当時は当社の営業活動に支障が出て大変苦労しました。このような経験から、開発担当者が現状に危機感を抱き、社内体制や社内規則を見直したいと考えたのがこの取り組みの始まりです。
INPITの支援サービスを活用する以前から、実務担当者に開発部門の社員を据えて、情報管理規程や退職者に対する秘密保持誓約書等の作成を進めていました。ところが、実務の進め方や正しい理解のもとで進められているかに不安を感じていたところ、INPIT山口県知財総合支援窓口を介してINPIT営業秘密・知財戦略相談窓口に支援要請できることを知りました。
知的財産戦略アドバイザー(知財AD)の最初のアドバイスは、秘密情報の管理体制を構築するには社長や役員等のトップダウンの取り組みとすることが肝要ということでした。そこで、社長、役員、知財ADを交えた意見交換を開催して取り組みの必要性を共有するとともに、退職者に対する秘密保持誓約書や競業避止義務の誓約書、自社への転職者による他社の営業秘密の持ち込みを防止する対策等について改善点を確認し、その確認結果を踏まえて情報管理規程や秘密保持誓約書等を策定しました。
その後、各部門に秘密情報のリストアップを依頼し、並行して一部の部署で新たな情報管理規程の運用を試行しました。はじめは従業員への周知不足で秘密情報の抽出・特定の仕組みが十分に機能しませんでしたが、知財ADに依頼し、例えば、競合企業に対して自社の強みとなる情報が秘密とすべき情報になり得るといったコツを伝授してもらいました。試行で抽出した運用上の課題は対策を施して、その後、本格運用に至りました。
過去の事件を教訓に企業文化を変えることができました。社内周知では、実務担当者から過去の実例を具体的に紹介し、その後に自社の情報管理規程等を説明することで、参加者全員の意識が高まり、秘密情報管理がいかに重要かを認識させることができています。全社員が意識して行動することで、当社の技術情報・営業情報だけでなく、顧客の情報も守ることができるので、事業での信頼感が向上すると期待しています。
2016年12月からINPIT山口県知財総合支援窓口と協力してご支援しました。社長や幹部、実務担当者の尽力によって会社全体の意識が変わっていく様子を目の当たりにし、支援する側として大変やりがいを感じました。秘密情報管理に実効性を持たせるには、経営層の関与と熱意ある担当者の存在が重要であると再認識しました。また、具体的な事例を紹介することが社内における本質的議論や注意喚起に効果的でした。
[最終更新日:2019年5月8日]
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知財戦略部 エキスパート支援担当
メールアドレス:ip-sr01@inpit.go.jp
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