工場見学の受け入れ管理を徹底し、コンニャクを守る
コンニャク製造を代々の家業としています。新製品を開発すべく研究を重ねた結果、海外からも好評を得る新たな商品を作り上げるに至りました。何らかの知的財産権を取得できないかと考えて、INPIT福岡県知財総合支援窓口を訪問したことが端緒となります。商標の出願支援を受けていたところ、材料や製法に独自ノウハウが多数含まれていることから、公開を前提とした特許権を取得する選択肢だけでなく、営業秘密として秘匿化する方法もあることを知りました。そこで、INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口に相談することにしました。
知的財産戦略アドバイザー(知財AD)の訪問を受け、当社社長との打合せにおいてノウハウ秘匿に関する法制度や実務の概要の説明を受けました。その中で、後発他社の特許により自社事業が継続不可能とならないように、まずは先使用権の確保が重要と考えました。そこで、当社の秘伝とも言える成分や製法の基本事項を書面化し、公証人役場で確定日付の付与を受ける取り組みをスタート。また、おいしさの探究や新商品開発に関する日々の創意工夫については研究ノートに記録を付ける活動を直ちに開始しました。
後日、社長と知財ADで明け方の操業開始から稼働中の現場を仔細に観察し、独自製法に関するノウハウ抽出や営業秘密管理を行う上での課題の確認を実施。その結果、部外者立入禁止エリアの設定や作業手順書へのマル秘表示、見学者の秘密保持誓約書の策定等のやるべきことが抽出されました。
その後、上記に対応した他、現在では、見学者の受け入れは社長が許可した場合のみとすることを決めて徹底し、見学者には「石橋屋工場見学マニュアル」を提示して事前に秘密保持誓約書にサインをもらい、当日は入構票の記入と身分証明書の提示を求めています。見学者は多くが当社の顧客であり、営業活動の一つとして対応していますが、「営業秘密管理の一環です」と説明すれば納得を得られます。むしろ秘密情報をしっかり管理する会社と映るため、見る目が随分変わりました。
知財ADから、従来ハードルが高く取り組みにくいと考えていた知的財産の問題について、理解しやすいレベルまで落とし込んで、具体的に説明してもらうことができました。アドバイスをもらった内容はすぐに実行できており、これからも独自製法に関する技術ノウハウをしっかり守れると期待しています。また、頭の中にある技術ノウハウを書面化して秘密管理することは、将来の事業継承にも役立つ取り組みと考えています。
その日に実行。国内を飛び出し海外も飛び回る社長の行動力は際立っています。先入観なく研究ノートを日課にしてしまったこともその一つ。操業中の現場に立入り、仕込みから装置・プロセスについて詳細な観察を行い、「何がノウハウにあたるか」を全従業員に把握してもらう等、会社の実情に合わせた支援ができました。その後も、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の徹底やHACCPへの取り組み等、絶えず進化を続けています。
国内需要が減少傾向の中、順調に海外向けの需要が増えてきています。平成30年羽ばたく中小企業300社、地域未来牽引企業認定、平成31年ISO22000を認証取得しました。
衛生管理・知財管理も社内ルールができ、やるべきことが明確化されました。今後は作業工程や作業管理のシステム化に向けて取り組んでおります。
[最終更新日:2019年5月8日]
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知財戦略部 エキスパート支援担当
メールアドレス:ip-sr01@inpit.go.jp
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