まずは開発部門から。優先順位を決め全社へ波及
当社は、鰹節・だしの素・めんつゆ等の開発・製造・販売を行なっています。これまで、特許権や商標権を中心に新たに開発された技術や製品の保護・活用を行なってきましたが、中には商品の配合や製造方法等、公開すべきではない情報もあり、これらは公開を前提とする知的財産権の取得が必ずしも適切ではありませんでした。そのような背景から、当社の知的財産担当者より、権利化の他に、情報を秘匿化して活用するという選択肢の提案があり、INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口に協力を要請して、取り組みを開始することにしました。
はじめに、知的財産の担当者と知的財産戦略アドバイザー(知財AD)とでどのように営業秘密の管理体制を構築していくか意見交換を行いました。その中で、一気に全社展開するのは大掛かりになってしまうとのアドバイスから、まずは新たに開発した技術等を守るべく、秘匿すべき情報が多い開発部門を対象とし、その後、結果を踏まえて全社展開を図ることとしました。
そこで、知的財産の担当者がさらに知財ADと打合せを行い、商品の配合や製造方法等が営業秘密として守るべき技術ノウハウの一つであることや、それらを秘匿化して競合他社に真似されないように管理するメリットが大きいこと等を確認しました。その後、知的財産の担当者が中心となり、知財ADのアドバイスを受けながら開発部門の秘密情報のリストアップ作業と、それらを営業秘密として守るための情報管理規程を作る作業に取りかかりました。情報管理規程の検討では、経済産業省発行「秘密情報の保護ハンドブック」に掲載の情報管理規程の例を参考にしています。秘密情報のリストアップと情報管理規程の作成は3ヶ月程度で行いました。
また、ルールができても実効性を持って実施できなければ意味がありませんので、並行して情報管理規程に沿った実運用体制についても検討し、開発部門内での営業秘密の管理体制を整えました。今後は、開発部門で構築された営業秘密の管理体制を踏まえて、全社に展開する予定です。
これまでは新技術や新製品について特許出願や商標出願を中心とした知財戦略を取っていましたが、この取り組みの結果、当社において営業秘密で守るべきノウハウ等が明確になり、また秘匿化するメリットについても理解が深まりました。今後は、権利化と秘匿化の両面から保護・活用を図る戦略に発展させて事業を進められると期待しています。知財ADには要所要所で具体的なアドバイスをもらい、大変助けになりました。
初回の支援は2016年12月。INPIT愛媛県知財総合支援窓口と協力してご支援しました。実務担当者が自発的かつ積極的に取り組まれ、当初の予定よりも早く対応が進み、非常にスムーズに体制構築を行うことができました。従業員数が多い会社や異なる分野の部門が混在する会社の場合、営業秘密の管理体制を一度に全社展開するのではなく、優先すべき情報や事業で試行し、課題を汲み取りつつ段階的に広げることも有効です。
愛媛県伊予市に削り節メーカーとして誕生し、以来一世紀に渡り、「鰹節・だし」一筋に続けてまいりました。お客様の「美味しい」のひと言を目指して鰹節・だしの価値を深め・広げることに取り組み、花かつお、だしの素、めんつゆなどの商品を発売し、そして近年は業務用商品の開発や海外事業も積極的に展開しております。さらに、美味しさのみならず、鰹節・だしの持つ健康価値を広げお届けするための研究にも挑戦しています。
[最終更新日:2019年5月8日]
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知財戦略部 エキスパート支援担当
メールアドレス:ip-sr01@inpit.go.jp
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