伝統的な製造ノウハウも営業秘密管理
自社ブランドのサンダルや和履き(雪駄)のオリジナルブランドの企画・販売を行っています。特に商標権や意匠権への配慮が大事です。当社は、INPIT奈良県知財総合支援窓口の協力を得て、先行文献調査や新製品に関する商標・意匠の出願を商品開発の一環として行っています。知財の重要性を強く認識する中で、雪駄ブランド「大和工房」の商標登録に取り組んでいたところ、未発表商品のデザインサンプルや伝統的な雪駄の製造ノウハウ、顧客情報等の非公開情報も会社の大事な知財であると聞き、まずは話を伺うことにしました。
取り組み前、残念ながら当社の秘密情報に対する管理意識は高くはありませんでした。知的財産戦略アドバイザー(知財AD)と管理状況を点検してみると、営業活動の一環で重要な情報をついつい口外してしまう懸念や従業員に適切な守秘義務が課されていない問題等があり不安な状態だと分かったのです。そこで、まずは社内情報をリストアップして社内ルール(情報管理規程)の整備を行い、従業員に何が当社の秘密かを見える化することにしました。あわせて、従業員や退職者向けの秘密保持誓約書の整備、立入禁止や撮影禁止区域の設定等の取り組みもスタートさせました。
当社の製品は履き物です。形状等のデザインは広く市場に出ていきます。そのため、デザインは秘密にはできず、意匠権等での保護が適当です。一方で、新製品が開発されると協力会社に製造委託をします。実は、その発注仕様書には個別の製品仕様を過不足なく明確に伝える独自ノウハウがあり、納期短縮に貢献しています。知財ADからは、発注仕様書は当社の強みであること、さらに協力会社にもしっかり管理してもらうように協力会社との秘密保持契約の見直しも助言されました。
そして、6ヶ月程度の取り組みにより、上記対策に加えて、「関係者以外立入禁止」「撮影禁止」の掲示、材料や製造方法の記載文書へのマル秘押印、施錠キャビネットでの資料管理にも対応し、営業秘密としての情報管理体制が構築できました。
知財ADの計画的なサポートとINPIT奈良県知財総合支援窓口のこまめなフォローで課題の認識から社内ルールの策定、運用開始まで至ることができて満足しています。情報管理の体制構築に必要なのは熱意。その他はさほど難しくありません。従業員からは会社の重要情報を扱っているという自負が感じられ、情報管理体制が整備されたことで社外からの信頼感が増したと感じています。今後もこの体制を維持できるよう取り組みます。
何よりも社長の熱意が取り組みを推進しました。INPIT奈良県知財総合支援窓口の的確なフォローもあり、2017年6月から6ヶ月程度という短い期間で営業秘密の管理体制を構築されています。同社のように形状等のデザインが市場に出てしまう場合、模倣品・類似品が現れやすい傾向がありますが、どのような情報が自社の営業や売上に有利に働くかを深く検討されており、強みや秘密にすべき情報の再認識に繋がったと考えます。
[最終更新日:2019年3月29日]
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知財戦略部 エキスパート支援担当
メールアドレス:ip-sr01@inpit.go.jp
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