当社は静岡県裾野市の富士山麓に広がる十里木(じゅうりぎ)別荘地内で、温泉掘削に取り組んできました。ここは昔から「温泉どころか水も出ない」と言われており、過去にも何度か温泉掘削が行われたものの、誰も成功していなかった場所です。この地を覆う富士山から流れ出た溶岩の硬さは想像以上であり、簡単には掘り進められなかったことに加え、東日本大震災等の地震の影響で、井戸が崩落するなどの様々な困難にも見舞われましたが、「絶対に出る」と信じて掘り続けました。実に5年の歳月を費やし、掘削許可を得た深さ1500mに到達したところ、そこで奇跡的に温泉を掘り当てました。そこで、この温泉水の宅配を目的とした会社を設立し、温泉を「溶岩の恵み」と命名して販売を開始しました。
従来は温泉が存在しなかった別荘地内で温泉掘削に成功したことにより、周辺に競合が無いことが一番の強みです。また、富士山が世界文化遺産に登録され、環境保全の観点から開発には厳しい規制がかけられることとなりました。この結果、今後、富士山麓での温泉掘削は出来ないだろうと言われています。これらのことから、今回の温泉掘削成功は、地元自治体からも地域の観光資源として多いに注目されています。さらにこの温泉水は飲用許可の取得が出来ました。これは当社の大きな強みとなっています。
当社は、当初別荘地内での入浴用温泉水の宅配で事業をスタートしましたが、前述の通り、この温泉水の飲用許可の取得に成功しました。そこで、この温泉水「溶岩の恵み」をペットボトル飲料として商品化し、販売をスタートさせました。数万年の時をかけて、溶岩層を浸透した温泉水は、極めてミネラルバランスが良く、胃腸の動きを活性化させる「メタケイ酸」をたっぷり含んでいます。
無色・透明・無臭でまろやかなくせの無い味わいの、美味しい上に体にもお肌にもいいアルカリ天然温泉水です。
同社には、温泉掘削に成功され会社登記を準備されている段階で「事業をスタートした後で、他社にネーミングを真似されたり、逆に警告されるような事態を避けたい」ということでご相談いただきました。
「温泉の宅配事業をスタートさせるにあたり、パンフレット等を手配する必要があるので、商標の出願方法を教えて欲しい。」というのが、最初の相談内容でした。しかし、検討されているネーミングを確認すると、「富士山」をイメージしたものが多く、どれも登録は難しいと考えられるものばかりです。そこで商標制度について詳しくご説明すると共に、自他商品識別力のあるネーミングの考え方についてアドバイスさせていただきました。
いくつかのネーミング候補をご検討いただき、弁理士と共に登録性の判断を中心に支援を行いました。その結果、最終的なネーミングとして「溶岩の恵み」を選択され、支援を依頼した弁理士を通じて出願し、登録となった後、事業をスタートされました。
同社は、商標権を取得されてから事業を本格的にスタートされたため、当初は別荘地内だけだった宅配事業を周辺市町にも広げられるなど、自信を持って温泉水の営業に取り組まれており、順調に事業が拡大しています。これはスタートしてまもない企業においては、大きなバックアップです。また、ペットボトル飲料の商品化では、新たな区分での商標出願も実施されました。知的財産権の重要性を十分にご理解いただき、将来的にも活用いただけるものと思います。
今回、新規事業をスタートさせる前段階で、知財総合支援窓口にご相談させていただき、商標権の取得およびその活用について的確なご支援をいただけました。窓口の担当者には、商標制度から調査方法やネーミングの考え方までご指導いただき、また登録性の判断については弁理士の先生と共にご対応いただきました。これからも新商品開発に関する相談は早めにしたいと思います。この度は本当にありがとうございました。
商標制度を十分にご理解いただき、そのメリットをご活用いただいています。また同社社長は引き続き、この温泉水をベースとした新商品/新サービスの開発に意欲的です。今後も事業拡大に向けて、産業財産権をご活用いただければと思います。 (中村 宏之)
温泉水の商標(257.7 KB)
掲載年月日:2014年9月19日