全国で唯一といわれる皮革元祖の神社「高乃木神社」のもと、皮革の歴史が深く根付く街、姫路に私たち前實製革所(まえみせいかくしょ)は昭和51年、先代前田實生(まえだみのる)により創業いたしました。私たちは職人による「オンリーワンの物づくり」をコンセプトに、独自の技術を追求し、細部まで手を抜かない「こだわりの革づくり」を目指してきました。
当社では、1枚1枚表情の違う皮を、その日の天候、気温、湿度などを見極めつつ丁寧になめし、「皮」から「革」へ仕上げていきます。お客様1人1人のご要望を考慮し、試行錯誤する中で鍛えられ、技術を磨き、日々新しい前實製革所へ・・・。「皮」が「革」へ生まれ変わるように毎日「変革」しつづけています。バッグデザイナー由利氏とのコラボレーションで開かれた海外への道はもちろん、国内に於いても随一といわれるよう、その「変革」の心を次代へつなげていきたいと考えています。
■姫革友禅 ®
兵庫県姫路市の伝統工芸品「姫革」は革とは思えないほどのしなやかさで輝くような白さが特徴の歴史ある革です。前實製革所ではこの「姫革」に、高精彩でつよい「京友禅」を、京都の職人の手によって施した高級皮革をおよそ30年前より製造しています。姫路の「姫革」と京都の「京友禅」、2つの技と伝統が融合したこの革を私たちは「姫革友禅」と名付けました。
従来の技法では出来なかった均一な色付けや人工的な斑(まだら)を前實製革所の技術で可能にし、目を奪うような美しい色彩と模様を持った革をつくり上げます。
同社の場合は、地元中小企業支援機関姫路商工会議所からの連携要請があり、商工会議所で行った外部窓口に、商品名、ネーミング、ブランドの相談に来られました。ひょうご・神戸チャレンジマーケット2012認定企業に採択され、姫路市ものづくり開発奨励補助金事業においても採択され、独自技術による自社製品を広く世の中にPRするためにも、新製品、新規事業の名称、ブランド、ネーミングに関する相談の要望があり、商標ブランド戦略について支援を行うことになりました。
同社は、友禅染や藍染の技術も取り入れた高度な加工技術を持っています。国内で飼育された高級黒毛和牛を用いて同社で開発したなめし技術で、精細な京友禅染を京都の職人の手で施した革製品について「姫革友禅」という名称で製造販売するために、同社の権利として商標登録するための必要な手続き、制度、手数料等の支援を行いました。
同社としては、出願や登録が目的ではなく、事業を見据えたブランド戦略が必要であることを認識され、自社内製で商標出願書類を作成し特許庁に手続きを行い、商標登録第5608930号「姫革友禅」(登録日:平成25年(2013)8月23日)を取得しました。同社はこの登録商標を、自社のパンフレットや商工会議所の商取引支援サイト、兵庫県 播磨(はりま)の情報紹介サイトなどに使用するとともに 、産業フェア出展等を通じてブランドPRを活発に行っています。その後も、姫路商工会議所や兵庫県立工業技術センターと連携して、皮革に関する新技術の知的財産保護の検討、特許やノウハウ管理について、弁理士による専門的指導を行い、事業展開に応じた形での知財戦略、他社の特許権侵害回避の指導を行いました。
同社は、商標登録後の権利の管理を自社で行う必要があることに理解されました。目に見える形でのブランドの権利化が行えたことにより、自社の創意工夫、新技術の開発等のものづくりに対する知的財産の保護、特許出願ではなく、ノウハウ(営業秘密)として知的財産を保護していくことの重要性を認識し、社内の知的財産や情報管理についても取り組みを強化するようになりました。
たいへんわかりやすく商標登録、ブランド戦略について理解することができました。権利化にも成功し満足しております。今後、開発技術や新ブランドについて知的財産の保護を検討する際にも、知財総合支援窓口へ相談を心掛けていきたいと考えています。
事業展開に応じた形での商標登録、ブランド戦略の支援、ものづくりの基盤である開発技術の保護、特許かノウハウか等について弁理士を派遣しの専門指導を行った、産業フェアや認定事業等積極的に取り組まれていて感心いたします。ブランドと技術の保護に知的財産を活用していただければ幸いです。 (孝橋 敦司)
商標「姫革友禅」(451.4 KB)
掲載年月日:2014年12月 4日
更新年月日:2019年6月28日