当法人は、丹波の漆に対して、①植栽、生産技術保全を行い国産漆の社会的ニーズに応える、②漆掻き職人の後継者育成、③漆文化の価値を発信する事業を行い、丹波漆の総括的保存に寄与することを目的としています。
また、上記の目的を達成するため、①植栽事業、②後継者育成事業、③生産技術保全事業、④他産地との交流支援事業、⑤丹波漆の製品づくり・販売事業、⑥丹波漆のPR事業、⑦丹波漆の交流会・植栽イベント事業、⑧里山保全事業、⑨異業種との交流事業、⑩子どもへの環境教育事業、⑪出版事業、⑫HP運営、⑬交流のためのアンテナショップ経営、その他の事業を行っています。
夜久野町は、京都府北西部に位置し、古くから日本でも有数の漆の産地として知られ、生産された「丹波漆」の流通は、京都の伝統工芸を支えてきました。しかし日本では漆の需要の98%が中国産という現在、全国の漆の産地は次々と姿を消していきましたが、ここ夜久野町では、今でも「丹波漆」生産の伝統を守り受け継いでいます。2012年生産組合がNPO法人化され、国産漆の生産と、後継者育成に力を注いでいます。またNPO化されたことに伴い、国産漆の重要性をPRし、地域の人々に地元の伝統産業の価値を高めてもらうような啓蒙活動にも取り組んでいます。
丹波漆は、他地域産の漆に比べ、深いつやと光沢があると言われています。またのびが良く、少量で広範囲にわたって塗ることが出来ると、塗り師さんより評価をいただいております。
さらに鮮度管理に重点をおいているため、鮮度の高い高品質な漆を提供させていただいております。
漆の需要の2パーセントという貴重な国産漆で、しかも日本の伝統工芸を支える京都産の漆であるという点も大きなセールスポイントであります。現在は生産量もごくわずかですが、漆の木の植樹活動に取り組み、生産量の拡大に努めていきたいと思っています。
同法人の前身である「丹波漆生産組合」の結成以前から、同地区は歴史ある丹波漆のPRと復興に情熱を注いでこられました。しかし、現在では安価な輸入漆に押され、日本の漆生産は壊滅的な状態です。そこで、同法人の設立に伴い、漆の植栽、漆掻き技術の承継などの活動と共に、「丹波漆」の地域団体商標登録を企画され支援を行うことになりました。
丹波産の漆の生産農家等によりNPO法人を設立したが、以前より使用している商標を地域団体商標として権利化したいとの相談を受け、知財専門家(弁理士)と共同で対応し、地域団体商標制度及びその手続きについての一般的な説明を行い、近隣都道府県で出願人のものとして広く認識されていることを示す資料が必要であること等のアドバイスをしました。
同法人は、当初「丹波漆」の地域団体商標を取得することを希望されていましたが、前回の相談の結果、著名性の証明が困難である等のため、地域団体商標の取得は現段階では諦め、ロゴマークの商標を出願することに決定されました。
その後、先行商標調査手法や出願書類作成のアドバイス、拒絶理由通知対応と継続的に支援し、商標登録が完了しました。
同法人は、当時の商標法の関係で、ロゴマークとの組合せによる一般商標を取得されましたが、その後、商標専門家(弁理士)のアドバイス、特許庁地域団体商標推進室長との意見交換などにより、漆生産だけでなく、漆を販売する問屋組合、漆を使用する仏具組合・漆器組合などの他を巻き込んだ、地域団体商標取得活動を意欲的に推進されるようになりました。
私たちのようなNPO団体を運営するものは、本業を別に持っていて、なかなか運営全般に時間が取れない方も多いかと思います。特に知的財産権など、専門的知識を必要とする問題を抱えてしまうと、もうお手上げです。今回、私たちは商標登録に関し、知財総合支援窓口を利用させていただきましたが、担当者の方は熱心に、親身になってお話を聞いていただき、素人の私たちにもわかりやすく説明してくださり、様々なアドバイスをいただきました。このように専門知識のない人間でも気軽に相談できるというのは非常にありがたかったです。
同法人の地域団体商標を取得したいという当初の要望は達成できませんでしたが、特許庁との意見交換などで法改正の情報を得、俄然、地域団体商標取得の意欲が湧いてきました。今後は、丹波漆の復興を目指し、原材料では第1号の地域団体商標取得を支援したいと思います。 (九鬼 正雄)
地域団体商標取得に向けた支援(224.8 KB)
掲載年月日:2015年1月 7日