当社は、元々、商品企画やデザイン、店舗プロデュースを行っていました。14年前に、ショッピングセンターのお茶の店舗開発をした際に、お中元やお歳暮でお茶がギフトとして売れなくなったと相談されて、お茶を使ったギフト商品ができないかと考え、たどり着いた答えが、「茶柱の入ったお茶」です。最終的には自社で開発することになり、苦労の末に『茶柱縁起茶』を発売、「2010年世界緑茶コンテスト」で金賞を受賞、現在大変好評を得ています。
これまでの20数年の経験から、商売とは「モノを売るのではなく、コトを売る。」ことだという答えに行きつきました。一本の茶柱から、きっかけづくりができて、茶飲み話が盛り上がるコト。そこに100gいくらのお茶とは違う付加価値が見いだせるのです。
「コト売り」の物語・コンセプトにネーミングやパッケージ、広告を加えて築き上げるブランディング力が当社の強みであると考えます。
『茶柱縁起茶』 ~ 茶柱が立てば縁起良し。~
古来よりお茶を飲む時、お湯呑みの中に茶柱が立つと古事の前触れと語り伝えられてきました。注がれた一服のお茶に茶柱が、凛と立ち浮かぶ景色は珍しく、滅多にないこと、有難い事として、大変喜ばれ良き事の前兆とされてきました。お客様や身近な人への一服のお茶に、今日一日の幸を祈り、良きことがありますようにとの心を込めて、おもてなしをした先人の言い伝えを「茶柱縁起茶」は受け継いでまいります。
ブランディング戦略には自信を持たれている同社の社長も、知的財産権、特に特許権による技術面での保護が不十分であることを感じられていましたが、多忙ゆえに取り組むきっかけをつかめずにおられました。そんな中、「福岡デザインアワード」の応募を検討される際に福岡県知財総合支援窓口のチラシが目に留まったそうで、まずは出かけてみようと相談に来られました。(福岡デザインアワードではゲスト審査員賞を受賞されました。)
同社は既に2件の商標登録と2件の製法特許の出願をされていました。既に商品が発売されていたことで新規性も喪失していましたが、最低限の出願がなされていたことが救いでした。特許出願のうち1件は既に拒絶査定となっていたものの、もう1件はできる限りの補正を加えた上での審査請求が可能であったため、知的財産権制度の概要を説明するとともに、まずは出願済特許の肉付けと、これを必ず権利化することを提案しました。
以降、専門家派遣制度を利用し弁理士に支援をお願いしながら、出願済み特許の補正と新たな出願の方針を検討しました。さらに、新たなパッケージでの商品展開計画を睨みながら、意匠権によるデザイン面での保護を加えた知的財産権全般による多面的な保護を提案しました。現在は、それらの具体的な出願のフェーズに入っています。
さらに新たな商品では企画段階であらかじめ何を保護するかの検討も行いました。
同社社長の「コト売り」という独創的な発想とブランディング戦略によりヒットした商品が知的財産権という鎧を纏うことで、他の追随を許さず、価格競争に陥らないより強い商品、ロングセラー商品になり得ること=商品力の強化につながることを実感されています。
新たな商品アイデアについても企画段階から知的財産権を意識して取組まれています。
知的財産権と聞くと、何か難しいもの、ややこしいものと考えて、多忙であるがゆえについつい後回しにしてしまいがちですが、期を逸してしまうと残るものは後悔だけです。
知財総合支援窓口を御社の社外知財部と考えて、まずは尋ねてみられてください。きっと新たな発見ができると思います。
商品のヒットに驕らず、自社の弱みを認識され、常に私の言葉に耳を傾けていただいた社長の姿勢が支援の成功につながったと思います。私自身も社長の取り組み姿勢や高度なブランディング戦略から多くのことを学ばせていただくことができ、大変有意義な支援になったと感じています。 (佐々木 賢)
知的財産権の多面的な保護による商品力強化(264.5 KB)
掲載年月日:2015年1月27日