五ヶ瀬町は、宮崎県の北西部、九州山地に位置し、町域北部から北西部~西部~西南部にわたって熊本県と接する人口4,450人の過疎地域です。ここは全体的に標高が高く、特に町域南部は標高1,000mを超える山地であり、寒暖差を利用した茶、米、高冷地野菜、花卉栽培が主な産業です。九州の大消費地である熊本市、久留米市、福岡市の花卉市場に近いこと、生産出荷時期が他地域と異なる地の利を生かし、ビオラ(花が4cm未満のパンジー)の苗に特化した生産、出荷を行っています。40年の長きにわたりビオラの育成に取り組み、15年前から品種改良に取り組み、20種以上の新品種の育成に成功し、年間5万鉢の出荷を行っています。
品種改良は20年以上の歳月をかけてノウハウを蓄積することで達成できました。蜂による自然交配では他の花の花粉が混じり、新品種の育成はできず、手作業と特殊な工具と特殊な方法による交配、期間内交配、選定する原種、根気とノウハウが必要です。
長い年月と思考錯誤により生み出された品種改良技術は、容易に真似ができず、大量生産も困難であり、大手企業はもとより、ノウハウを持たない中小企業の参入が難しい分野であり、オンリーワンの商品作りが自社の強みであると言えます。
「碧いウサギ」と名付けられた新品種のビオラは、最初は花びらが白色をしており、次に中心部に青色が発色し、全体が青色に変化する特徴を有しており、「世界のパンジービオラ展」に出展し、育種家として高い評価を得ています。ビオラとパンジーとの定義の区分はかなり曖昧で、花径5cm以上をパンジー、4cm以下をビオラとされているが、当社のビオラは花径3.5cm以下に抑えています。当社のビオラは熊本、久留米、福岡の花卉市場を通じて関東地区、関西地区にも供給されています。
同社が県の農業改良普及センターの農業指導員に自分で名付けた花の名前を他人に勝手に使用させない方法はないかとの相談をしたところ、知財総合支援窓口を紹介して頂いたことが窓口活用のきっかけです。
新品種のビオラの名前の商標登録について相談を受け、会社のロゴマーク、2種類のビオラの花のロゴマーク、地域限定生産の茄子ロゴマークのデザイナーによるデザイン支援と弁理士による商標出願支援を行い、無事に商標登録して頂くことができました。
販促ツールのデザイン、POP作成支援、委託生産者との契約締結に向けた弁護士による契約書作成支援を受けて現在に至っています。
以前の同社は、知的財産権の保護についての認識が無く、新品種の花の名前も他人に使用されることも多々あったとのことですが、知財総合支援窓口をご利用頂いた結果、自社商品の権利保護と差別化による経営上の効果を実感していただくことができました。専門家の支援を受けながらロゴマークをデザインし、出願することで少ない予算で期待以上の成果に繋がったと実感しています。
優れた知的財産を有しながら保護についての気づきがなく放置されてきましたが、県の農業改良普及センターの農業指導員の働きかけも功を奏し、予想外の成果に繋がりました。知財総合支援窓口を活用することで、特許、実願、意匠、商標の出願以外の幅広い支援が得られることから、先ずは相談することをお勧めします。
知的財産権の保護、ロゴマークのデザイン支援、商標出願と登録、販促ツールの作成支援、生産体制の強化に伴う外注政策と契約管理と約1年間をかけて支援を行い、相談者の満足する支援を行うことができました。次は、新品種登録の支援を計画しています。 (安藤 律夫)
掲載年月日:2015年7月15日