当社は2002年、生活研究グループを母体に女性起業化グループを設立し、加工品を製造販売しながら地元の農産物の代理販売を行う直売所を奄美市笠利町和野で10年間運営してきました。2013年に市の農産物直売所の指定管理者となり、拠点を奄美市笠利町節田に移しました。今年も指定管理を受けるための基盤を充実させ、会員の雇用の安定を図るため、2年間の準備期間を経て2015年4月に法人化し、新たな運営を始めました。
現在は、伝統菓子の製造販売や地元野菜を販売し、地域の交流拠点・観光拠点としての役割を担っています。
生活研究グループが母体であるため、「食」へのこだわりが自社の強みです。また食材は、「地域」にこだわり、自社で製造する加工品は笠利町産を使用しています。
年に2回、自社の特産品を詰め込んだ「ふるさと便」を全国に発送し、奄美大島の「笠利」の魅力を発信しています。
また農産物販売所の機能を活かし、お客さまとのふれあいを通して、地域の情報発信に努めています。
奄美の特産品である「パッションフルーツ」を使用した「パッションミキ」と「フルーツビネガー」を開発しました。
パッションミキは、奄美の伝統的な発酵飲料である「ミキ」を若い世代にも広く受けいれられるように工夫し、おいしく仕上がりました(商標登録済)。ミキに馴染みのない観光客の皆様にもおいしいと評判です。
またフルーツビネガーはパッションフルーツの糖度と酸味のバランスがよく、大変まろやかで、カルパッチョや南蛮漬け、ちらし寿司などに合います。
同社は、女性起業化グループとして食品の商品開発に取り組んでおられました。
当初、自治体の担当者と同社を訪問したときには、農産物販売所の指定管理の指定を受け運営することが決まっていました。しかし、今後の運営に不安を抱えているため「何をどうしたらよいかわからない」という中で相談が始まりました。
販売している商品を拝見したところ、小さな直売所で販売している商品であったため、商品のブラッシュアップが必要と感じました。また、農産物販売所の店舗設計・陳列商品等も定まっていませんでしたので、まずは商品にどのように付加価値をつけていくか検討することから始めました。
地域の特産品を活用した商品開発に取り組んでいる際に、味の安定化が図れないなどの課題があったため、技術的な支援を行いながら、さらに商品パッケージのデザイン開発の支援を行いました。商品ができるまでには、ブランドコーディネータやデザイナーなどの専門家を活用し、島外へのマーケットを拡大するための商品づくりを行い、商標登録による保護と活用を意識するようになり、出願支援を行いました。
また、法人化に向けた組織づくりのために弁護士を活用しました。
起業化グループとして、女性が台所から発信するイメージでしたが、直売所の指定管理者となり、社会参画への意識がより高くなりました。
150軒の契約農家の所得向上・六次産業化として魅力ある新商品開発への取り組みを積極的に行い、同社ががんばることで「農家が元気になる!」と、ますます意欲を高めています。
商品開発を通じて、これまでは意識をしなかった知的財産について考えるようになりました。また、権利を持つことによって、自信にも繋がったと思います。
課題はまだまだたくさんあり、今後はパッションミキの常温化(現在は冷凍出荷・冷蔵販売)に取り組みたいと思っています。まずはお気軽に相談されることをお勧めします。
窓口担当者が知的財産という言葉を先行していたら、この事業所からの相談はなかったと思います。「このままではいけないが、どうしたらいいかわからない」というお話はよく耳にします。課題をひとつひとつクリアにしていく中で、女性グループが知財の活用を認識し、法人化しました。この事例を参考に、まずは知財総合支援窓口へお声かけください。 (大脇 裕美)
知財マインドと社会参画(536.4 KB)
掲載年月日:2015年10月26日