今年創業89年目を迎える(2023年現在)洋食屋です。福井県では2番目に歴史の古い洋食屋として親子三代にわたって親しまれています。昔ながらの「オムライス」や「ハンバーグ」といったメニューやローストビーフの丼ぶりと言った新しい料理にも挑戦しています。
新しい料理を作り、その料理の名前を考えるときは必ず特許情報プラットフォームで商標や意匠の確認を行います。そのおかげで「目玉焼き専用ドレッシング玉卵DAY]というヒット商品を開発し、加工食品の工房(福保第9310132)の設立に至りました。
今までは当店に来られるお客様に、どのような商品を開発して提供するかを目的に経営をしてきましたが、知的財産の知識が増すごとに、新たな販路開拓先として、飲食店やサービス業に商品を提供することを考えるようになりました。同業だからこそ分かる「問題解決商品」の開発につながったのです。商標や特許の知識がなければ「特許申請」や「商標権」の取得を踏まえた商品開発にはつながらなかったと思います。飲食店でこのようなブルーオーシャンを見つけ商品開発を行い、知的財産権を取得し販路開拓を行う企業は私が知る限り、当社以外ありません。
①多段式梱包容器(右上図)
デフレ脱却がなかなか進まない中、テイクアウトの業態がのびており、当社が開発した「多段式梱包容器」は、過去にも例がなく、一見してすぐに違いがわかるものです(特許第6143006号)。
②簡易吐瀉物処理セット「ノンパニックDX」(右下図)
ノロウイルス食中毒が季節を問わず全国で発生している中、行政から飲食店における吐瀉物処理セットの準備が求められていますが、既存の処理セットは高価で、各飲食店での準備は進んでいないのが現状です。そこで、一回使い切りのワンコイン(500円)の処理セットを開発しました(商標登録第5792682号)。
同社は、以前より、オリジナル商品・サービスの開発に積極的に取り組まれており、これらオリジナル商品・サービスの知的財産権による有効な保護についての相談がありました。
同社の簡易吐瀉物処理セット「ノンパニック」を、商工会議所主催の合同プレス発表会や新聞紙上にて発表したところ、多数の問い合わせや注文等があったため、早急に、特許・実用新案登録出願、及び新規性喪失例外規定適用の準備を行う必要があることについて説明を行いました。そのなかで、特許制度及び実用新案制度のそれぞれの特徴を踏まえた知的財産権による多面的保護についての助言を行いました。
その後、特許情報プラットフォームによる先行文献調査結果、登録可能性、権利範囲等を踏まえ、事業活動に有効な権利取得を図るために、特許出願手続、新規性喪失例外適用手続の他、ブランド名保護のために商標出願手続のそれぞれについて支援を行いました。商標出願は、当窓口の配置専門家相談を利用しながら、拒絶理由を解消し、商標登録を受けました(商標登録第5792682号)。
開発商品の売行き打診、販路開拓、ブランド名周知を図るために、プレス発表等が重要である一方、商品の優位性の維持を図るための特許権等の取得には新規性が求められ、そのために新規性喪失例外制度を利用したり、早期審査制度を利用したりするなど、適時に知的財産権制度を使う必要があることを理解して頂けたと思います。
知的財産権を取得し活用するということは「夢」を実現するための一番の近道なのかもしれません。当社のような零細企業が大手企業に立ち向かえる唯一の方法は、「目的」を目に見える形にすることです。結果、事業計画書作りや補助金・助成金を申請する度に「評価」につながりました。知財総合支援窓口に相談をするかしないかで、「目標達成」の道のりが大きく変わります。
相談者は、当初より事業活動に知的財産権制度を活用することの必要性を理解されておりました。今後とも、商品開発、商品化、販路開拓等の各段階に亘って、相談者の経営判断に資する知的財産権制度の説明や施策の紹介等ができればと思います。 (愛宕 淳一)
開発商品の知的財産権による保護 (911.0 KB)
掲載年月日:2016年12月15日
更新年月日:2023年8月28日