当社は、沖縄県糸満市にて洋裁教室、仕立てなどを行う個人事業として設立しました。
地域の老若を問わず、嗜好や体型に合わせ、さまざまな季節の行事等に合せ、洋服の仕立て、刺繍、その他修理などに応じています。また当社では、趣味や仕事として洋裁を学びたい方向けに教室を開催し、人材育成も行っています。
当社では、お客様の要望に対して堅実にかつワンストップで対応できる体制・技術、および設備・ノウハウを備えています。特に導入したIC制御の刺しゅうミシンは、出産祝いや卒業式などで、贈答品や衣装に刺しゅうを行うことが多い地域のニーズに対応しており、シーズンには繁忙を極めます。
基本的にはオーダーに応じ、仕立を行っていますが、自分に合った服を注文してくるお客さんから、「こんな服がないか」「スタイルよく見せたい」と一般の店舗にない商品への要望を聞くことが多く、こうしたニーズを踏まえ、衣服に限らず、アクセサリー、布製雑貨におよぶ自社商品をいくつか開発、販売しています。
当社では、お客さんとの会話の中から、農作業時の悩みを解決する商品をデザインし、売り出しています。
土質によりますが、農作業時に泥や土が靴底に積み重なってしまい、歩きにくく作業性が落ちるという悩みについてお客さんから聞きました。雨天時に靴にかぶせるビニールのカバーでは耐久性に乏しいため、繊維に関する知識を活かして、水分を弾く化繊を生地とし、長靴や靴の上から履くことができ、土が付きにくくなる、靴カバーを考案し、「はか土~る」という商品名で発売をしました。地域の農協の購買部等で販売を行っています。
同社代表者が、沖縄県発明協会が実施している「沖縄県発明くふう展」に創作したデザインを出品してみたいと、前述の靴カバーについて、どのように知的財産権による保護を行ったらよいのか知りたい、と窓口に相談に来られました。
同社の業務や商品のアイデアをヒアリングし、特許、実用新案、意匠を中心にした知的財産制度の詳細について説明しました。相談者からは、同社においても経営課題に見合った効果的な知財活動の導入を検討したいが、技術的なポイントは見出しにくい同商品については、意匠権で出願してみたいと方向性を定めました。また意匠権であれば、自ら出願書類を作成してチャレンジをしたいとのことで、その作成方法等について、アドバイスを行い、特に図面の作成には不慣れであると伺い、実物添付で対応することにしました。
出願後、商品の準備・販売、PRを実施し、無事意匠登録も済ませました。その後、農協等での販売も順調に進み、リピート先などが出てきたため、注文に対する生産が社内だけでは追いつかなくなってきました。そこで、再度窓口へ、今後の製造体制やライセンスについてアドバイスが欲しいと訪問されました。相談の中では、ライセンス先の探索や交渉には時間がかかるため、ひとまず製造委託先を探してはどうかとアドバイスしました。ただその候補企業は不明であったため、沖縄県産業振興公社の中小企業支援センターの担当者へ相談したところ、県内にアパレルではないがミシン設備を備えた企業がある、と情報を受け、打診している段階です。
同社の意匠出願に関して、商品の独自性のPR、今後のパートナーとの交渉力を高める材料などという明確な意義を見出すことができました。
知財を企業PRやパートナー獲得のツールとして活用する方法を学べたことはとても有意義でした。
自社の強みを伝えることや協力関係をつなぐことは知財活動の効果であり、意匠出願する効果も得られるということを理解していただけたと確信しております。引き続き、商標戦略などに関するご支援もさせて戴けたらと考えております。 (宮川 準)
靴カバーに関する意匠の出願検討(364.1 KB)
掲載年月日:2017年3月22日