設立以来孫請けの様な形で他社のブランドとなる手延べ麺を製造。職人気質で「他に負けない品を」念頭に励んで来ました。この業界は厳しく設立以来下降を続けており、現在では工賃単価は当初の6割以下です。
しかし、「おいしい麺」を自社ブランドで販売しようと色々な麺作りにチャレンジし、口コミ販売を続けております。
今迄素麺(19cm10g50~90本)・細うどん、うどん(7~20本)・白髪極細麺(240~300本)・蕎麦・抹茶麺・紅芋麺・胡麻麺・卵麺・拉麺等々・各種の麺製造に関わってきました。他人に出来る麺は何でも・出来ない物はチャンスと捉えどうにかして作り上げて来ました。
他所に無い麺の製造を考え、その為の装置を開発し出来上ったのが「よりかけ麺」です。
「よりかけ麺」(商標登録第5838668号取得)
この商品の特徴として、捻じり螺旋形状の乾麺であり茹でても形状を維持する、これまでにない乾麺の販売を開始しました。また、製麺だけでなく螺旋形状に捻じるための装置自体も自社にて開発し量産機を完成させました。従来の手延べ麺と比べ新たな食感に加え、つゆ・たれ・ソース等が絡みやすく程良い線状で創作料理などにも幅広く利用できます。
南島原市は手延べ麺の名産地で、生産量2003年をピークで2006年以降は略横ばいとなり、直近2年で100社程度が倒産に追い込まれている状況の中、同社は、生き残りを掛け約10年を費やし漸く新商品を完成させることができました。しかし、模倣品対策や有効な拡販手段などを知らず、製品完成後も手を拱いていたところ知人から知財総合支援窓口が県内にあるから一度相談するように勧められたのがきっかけです。
「この商品に社運を掛けているため、何らかの権利を取得したい」との相談を受けました。模倣品が出回ることを恐れ、既に弁理士に特許出願相談を行っておりましたが、権利化は困難と言われたとのことで、当窓口では麺形状に特徴があるので意匠出願と実用新案出願を提案し、同商品梱包袋に「実用新案出願中」と記載したシールを貼り付ける、予防的な処置を勧めました。また、不競法による模倣品対策の説明、並びに拡販に関しては、長崎県よろず支援拠点との連携支援を行う旨を伝えました。
実用新案を出願後は、生産性改善のための助言を提供しましたが、更にブラッシュアップした装置部品を完成させノウハウ秘匿を含め新たな実用新案の作成を行っております。また、アンテナショップ(日本橋長崎館)での展示販売がスタートし、よろず支援拠点との連携で、テレビ取材や放送が行われ、よりかけ麺の商品としてのお披露目とネット販売を開始しました。その効果があって、最近では試供品を渡しておいた「ぐるなび」の取材も確定しました。また、本格量産装置の試作に関しては、ものづくり補助金申請を勧め、見事採択され、同製品製造に必須である付帯設備の技術的な相談などを受けており支援を継続中です。
大きな変化は、相談者が誰にも相談できず一人悩んでいた時とは別人のように、ブランド強化による販売戦略イメージなど、多くの話をされています。
他に無い麺開発をして来ましたが、装置の方は特許庁に出すと他人に知られ一部分の変更で、他人も装置を造ると思い躊躇しておりました。出願してみるとやはり安心感が有り、製造した麺に対しても自信が持てるようになりました。弁理士の方と違い当方の事を考え色々と助言して頂き、知り得なかった他の公的支援も色々有る事を知り将来に希望がもてるようになりました。何よりも出向いて下さるのが非常に有難いです。
相談当初は、切羽詰まった感がありましたが支援を継続していく中で、本商品への熱い思いを話され、窓口担当も是が非でも成功させてあげたいとの思いで手厚い支援を行いました。現状は、漸く道が見えてきた段階です。また、本商品は海外展開も可能と読んでおり、今後もフォローを継続していきます。 (足立 尚志)
知財活用による新商品拡販支援(309.8 KB)
掲載年月日:2017年4月10日