当社は、矢野運送有限会社代表取締役矢野正彦が吸油シート『ペーパット』を製造販売するために2014年に設立した会社です。運送業という業務の中でトラックの給油口のキャップから軽油が漏れたタンクを見て環境対策・CSR活動に積極的な荷主様の工場などではどのように思われるのだろう、一滴も油脂類を工場内に落とさないための商品を開発することはできないかと『ペーパット』の開発に取り組み製品を完成させました。矢野運送有限会社としては製造販売できないことから、新たな会社である「やのや」を立ち上げ、現在、製造及び販売を行っております。
紙の生産が盛んな不織布発祥の地である高知という恵まれた環境の中で、運送業が抱える課題を、『紙の持つ無限の可能性を利用した商品』で解決する発想が生まれました。運送業での経験と実績が現在の業務や開発において効果的に活かされており、工場内へのトラックからの軽油漏れをストップさせたいという環境対策に真剣な製造メーカや物流会社のために商品を提供しています。
吸油シート『ペーパット』は油脂類を吸収して水分は撥水する素材を使用しています。一度吸収した油脂が水分によってシートから出にくい構造になっており、車外取り付けの燃料タンクに装着すれば、その効果が分かります。使用済みの手袋やタオルでは得られない不織布ならではの機能を利用したオリジナル商品です。自社の環境への対策をトータルで取り組みたい、環境対策の取り組みについて他社との差別化を図りたいとお考えの企業向けの、取引先の工場に、「一滴も油脂類を落とさない!」を実現する吸油シートです。
トラックの給油口のキャップから軽油が漏れたタンクを見て「汚いなぁ~臭いなぁ~」と感じていた同社社長が、この問題を解決する製品を開発したいと思い高知県産業振興センター(ものづくり地産地消・外商センター)に相談に行き、高知県立紙産業技術センター紹介をしてもらいテストを繰り返し、給油シートとして採用する不織布の選定、積層シートの構成などの検討をしておりましたところ特許出願の検討する必要があるのではないかとなり、センターの紹介で窓口を利用したことがきっかけです。
ディーゼルエンジンの給油口の液垂れを防ぐため、不織布を用いて液漏れした軽油を吸収させる商品を考えたので知財について支援してほしいというのが最初の相談でした。知財総合支援窓口にて、先願調査を行うに当たっての助言、専門家を活用した先願調査に基づいた新規性及び進歩性の有無の検討に関する助言など、ものづくり地産地消センターと高知県立紙産業技術センターと知財総合支援窓口で協同し支援を行い特許出願に至りました。
吸油するための不織布の構成については完成したもののデザインについて悩まれていましたので、窓口機能強化事務局の意匠専門家派遣制度などを利用して意匠専門家からのアドバイスをいただき、価値を高めるため、機能性を向上させるデザインを取り入れた商品を完成させ、意匠登録も行いました。現在は、特許(審査請求中)や権利化した知財を活用した販路開拓などについて支援を行っております。
さまざまな専門家に相談できたことで、ゼロから商品を完成させ製造販売会社を立ち上げることができました。会社の設立では高知商工会議所や日本政策金融公庫で事業プランを作成する際に、知財権を取得していたことが大変有効に働きました。アイデアを形にする中で知財活動に取り組むことで知的財産権の必要性・重要性についてもご認識いただけたものと感じております。
知財総合支援窓口では、私の様に全く知識のない相談者にも知財についてゼロから丁寧に教えてくれ、それぞれの商品や事例に合ったアドバイスをしてくれます。今後商品開発や事業活動をする上で、ますます知財や秘密管理が重要視されてくると思います。その際は専門家のアドバイスを適切に受けられる知財総合支援窓口の活用をお勧めします。
開発段階から支援を行えたことにより知的財産の取得や活用方法などを実体験していただけたのではないかと思っております。この世に無かった商品であるため市場開拓においてさまざまな困難がありますが、知財活用で乗り越えていただきたいと思います。困難を乗り越えるための知財の活用について今後も引き続き支援していきます。 (畠山 佳子)
吸油シート『ペーパット』の開発・権利化・販路開拓(199.8 KB)
掲載年月日:2017年5月30日