当組合は、昭和51年に「赤間硯」の原産地である宇部市北部の万倉(まぐら)地区の硯職人により設立されました。
現在、万倉地方で採石された原石を、宇部市及び下関市で加工・製作しています。「赤間硯」の名は、現在の下関市(旧名赤間関)で生産を始められたことに由来し、昭和51年に、国の伝統工芸品に指定されています。
江戸時代前期までは、採石・製作・販売の全てを下関市で行われていましたが、江戸時代後期からは、宇部市万倉周辺で採石が始まりました。毛利藩を代表する献上品として、重要な藩の名産品となりました。
「赤間硯」の原石である、赤色頁岩(せきしょくけつがん)は、山口県西部に分布しています。現在は、採石権を持つ当組合の硯師の手で行われています。赤色頁岩の特徴は、墨をすりおろすための鋒鋩(ほうぼう)(微粒子のギザギザ上の目)を満遍なく含んでいることです。このため、墨を細かくすることができ、また伸びの良い墨液を得ることができ、硯に適しています。
「赤間硯」に加えて、赤間石を用いた「薬味皿」や「箸置き」「お猪口」等の日用品にも取り組み、地域資源を生かした新たな展開も進めています。
赤間硯生産協同組合が加入している宇部市のくすのき商工会から、地域の伝統工芸品である「赤間硯」をブランド化するため、地域団体商標を取得できないかとの相談がありました。
商標制度や、地域団体商標制度の概要についての説明、更に、海外での販売も予定されていることから、各国ごとの商標制度についても説明し理解を深めていただきました。また、近隣地域の下関市にも、硯の生産者がおられることから、お互いに協力が必要であることを説明しました。
地域団体商標制度をより詳しく理解していただくために、中国経済産業局特許室の支援で特許庁の産業財産権専門官を招き、組合員の方だけでなく、宇部市役所や商工会の方々を含めての説明会を開きました。また、地域団体商標出願経験のある専門家(弁理士)による、数回の出願準備検討会を行いました。
職人が作る伝統工芸品が商標登録できるか迷っておられましたが、他県が同様の地域団体商標を取得されたことから、同組合も「赤間硯」の出願を決心されました。出願にあたっての勉強会や、地域団体商標の周知性に関する資料集め、また、近隣地域の生産者との話し合い等を通して、職人同志の「赤間硯」の復活とブランド化に向けた意思統一ができました。
知財総合支援窓口を利用し、商標の概要や出願手続、出願時の注意事項など、詳細かつ丁寧に説明していただき、念願の地域団体商標を取得することができました。また、商標取得後の活用方法についてもアドバイスいただけますので、知的財産権に興味がある方は、まずは相談されることをお勧めします。
この度の地域団体商標取得の支援は、組合と自治体や特許室、専門家との連携ができて、スムーズに登録できました。地域ブランド化はこれからが出発ですので、引き続き支援していきたいと思います。 (小柳 正)
伝統工芸品「赤間硯」の地域団体商標支援(243.6 KB)
掲載年月日:2017年6月20日