現代の日本では、特定の記念日やイベント以外には伝統的な着物を着ないことが習慣になってきており、着物が衣服としての進化を止めてしまったことが、一般的には着られなくなった原因の一つと考えています。そこで当社は、現代の生活様式に調和する機能的な和服の制作を志し、特許を取得した簡単で着崩れしにくい袴を開発し、それらを主軸として組み合わせた新しい和服のスタイリングを提案しています。また当社は、自社ブランド名の「和次元 滴や」、各スタイリングのレーベル名の「浮世しのぎ」や「士揃ヱ」の商標を取得するなど知的財産権を活用して事業展開をしています。
従来の袴では、着付けが複雑で、紐の結び方などにかなりの熟練を要します。そのような中、着やすく着崩れしにくい工夫を凝らした独自の袴との組み合わせ「袴式和服」を開発し、特許を出願したことから当社の活動が始まりました。現在では、袴を主軸に開発した様々な周辺アイテムも増え、独自の設計によるこだわりのデザインを、選りすぐりのテキスタイルと工夫を凝らした縫製で仕上げています。現代の人がまとう、日本の服をコンセプトとして、日本の洒落と快適な着心地を追求した和服を、自在なコーディネートで発信し続けています。
当社が和服の世界観をさらに増幅させるべく設計した新型の羽織が、「和慈羽袖」です。新型の羽織と言っても、通常の羽織と比べると洒落でも機能でも格段に振り幅が広く、もはや別次元の羽織り物と言えるでしょう。プレーンな状態では、大きな羽の様な袖を持つ羽織ですが、この大きな羽袖のボタンを外し、肩に掛けることで、様々な表情を見せてくれるアイテムです。ポケットも付けるなど、使いやすくするための工夫も施しています。着こなしのパターンは、シンプルに羽織として、次に羽袖をショールのように逆側の肩や首に回すことでマント風に、さらに羽袖をまくり袖無し羽織のようにと、状況に応じて多彩な着こなしが楽しめます。
同社は、特許を取得した着やすく着崩れしにくい独自の袴と組み合わせた商品を開発し、事業を進めて来られました。自社ブランド「和次元 滴や」のリニューアルした新しい商標や和服の新しいレーベルの商標の取得について、知財総合支援窓口に相談に来られたのがきっかけです。
今回、同社は全く新しいコンセプトの羽織を開発され、その知的財産権による保護について相談を受けました。同社の新構造の羽織「和慈羽袖」は、状況に応じて多彩な着こなしができる羽織であり、羽織の新しいデザインとしての意匠の取得よりも、新構造の羽織のアイデアとして特許を取得する方向で検討するように助言しました。新構造の羽織の特徴点を抽出し、J-PlatPatによる先行技術調査を実演指導し、発明のポイントのまとめを支援しました。
新構造の羽織の発明の特徴点に基づき、知財専門家(弁理士)のアドバイスも取り入れて、相談者による特許請求の範囲や明細書の作成と特許出願の支援をしました。記載不備に関する拒絶理由通知に対する手続補正書の提出を支援し、最終的に特許を短期間で取得されました(特許第6074092号)。 現在、羽織の発明に続いて、袴と組み合わせる着やすく機能的な袴用着物の発明についても特許出願中です。
同社は、現代の生活様式に機能的に調和する和服をコンセプトに、ユニークな商品を開発・製造・販売する過程で、知的財産権をある程度は意識されながら事業を進められてきましたが、積極的に活用されるところまでは至っていませんでした。今回、新構造の羽織の発明の特許取得を契機に、新規開発された和服のアイデアの特許取得や、新しいレーベルの商標取得など、状況に応じた知的財産権の取得について、適切なタイミングで相談に来られるようになりました。
知財専門家を含めた知財総合支援窓口の支援を利用することにより、新たな商品展開の中で新構造の羽織のアイデアに関しての短期間での特許取得や、また新しいレーベルの商標取得についてのアドバイスなどの支援が受けられます。知財に関する悩みごとがあれば、自社でいろいろと悩まず、まずは知財総合支援窓口に相談されると、適切な解決策を得られるのではないでしょうか。
機能的でスタイリッシュな羽織の発明について、短期間での特許取得の支援ができました。現在、羽織の発明に続いて袴と組み合せる袴用着物の発明についても特許取得にチャレンジしておられます。今後も同社は継続して新しいコンセプトの和服の商品展開を検討しておられ、専門家の協力を得て出来る限りの支援をしていきたいと思います。 (北川 俊治)
現代に調和した機能的和服の知的財産権取得の支援(227.6 KB)
掲載年月日:2017年8月 7日