当社は、船舶等の製造を行っている株式会社カナサシ重工の関連会社として平成17年8月に設立、鋼製防火水槽・耐震性貯水槽をはじめとする鉄鋼製品、各種機械器具の設計・製造・販売を行ってきましたが、平成25年6月に株式会社カナサシ重工の貯水槽製造部門を、当社に移管し独立。耐震性貯水槽の専門メーカーとして、日本各地の危機管理・消防・水道等の行政機関を主な顧客としています。平成23年の東日本大震災で起こった液状化現象による被害をきっかけに、地上への浮上抑制機能 「サンドマジック(商標登録第5536791号)」を開発、特許を取得(特許第5919047号)し、60基以上販売しています。
当社は、長年造船で培った加工技術によりスチール製貯水槽を製造してきました。東日本大震災の被害地区に設置した耐震性貯水槽は、震災後の現地調査では全く損傷は見られませんでした。
当社の飲料水兼用貯水槽では、水の流動特性を活かし、常に新鮮さを維持しており、造船技術で培った高い溶接技術、全面溶接構造により優れた止水性を持っています。また、一般財団法人 日本消防設備安全センターの認定を取得しています。
防火水槽等は、耐用年数は50年ですが、中には設置後50年を超える水槽が存在しています。経年劣化水槽を地中に埋設したまま、耐震補強及び補修できる工法を開発し、特許出願しております(特開2015-145588)。H型鋼を経年劣化水槽の内部でボルト締めによってフレームに組み立て、水槽内壁に固定する工法で、繰り返し補修できることや、施工時に火気を使用しない等の利点もあります。耐震性能検証実施済みであり、施工の効率性及び安全性も高く、既存の工法と比較して優位性があります。新たに貯水槽を設置するより低コストとなります。
同社は、株式会社カナサシ重工の事業分割により平成25年6月1日より業務が移管され、それに伴い、これまでに取得した権利等の移転等に必要な手続きについて、知財総合支援窓口へご相談に来られました。
特許出願中の地下埋設型貯水槽や補強方法等について、出願人名義変更手続きや、商標権移転登録申請について支援しました。再建中の会社からの変更手続きであるため、専門家(弁理士)を通じて手続きを行うことを助言しました。
地下埋設型貯水槽の権利化を目指すために、審査請求時期や、審査請求料の軽減措置について支援しました。その後、老朽化した貯水槽の補強方法や、飲料水兼用貯水槽において水の流動特性を活かした配管について、特許性や発明のポイント等を検討し、特許出願の支援を行いました。
特許出願により社員のモチベーションが上がり、開発意欲も高まりました。知財の重要性や、知財が営業ツールの一つとして活用できることを認識していただけたと思います。高い技術力に加え、特許取得製品であることから、販売実績も上がっています。
これまで自社技術の創意工夫が競争の原資と考え、アイデアを形にすべく事業に邁進して参りました。その中で、自社の保有技術の防衛も重要であるとご指導頂き、特許出願等知財関連の取組を行ってきました。こうした取組が各種補助金の活用や今日の競争優位の源泉となり、大変感謝しております。気軽に相談に応じて頂けるスタッフの方々ばかりですので、積極的にご活用されてはいかがでしょうか。
日常生活はもちろん、災害時等は安全で安定的な水の確保は必要不可欠です。同社は、安全な飲料水を供給するために耐震・耐荷重性能のある貯水槽を提供しています。今後も知財を活用しながら、事業拡大できるような支援をしていきたいと思います。 (宮枝 清美)
強みを活かした技術開発と知財活用(206.9 KB)
掲載年月日:2017年8月23日