1863年(文久3年)、初代 山元太吉が小松市埴田町にて、九谷焼の窯を築窯しました。現在、本社を小松市河田町に置き、また、東京と大阪に事務所を構え、主に百貨店向けに九谷焼の製造・販売事業を展開しています。作家ものや特注品等の少量生産を得意としており、多くの有名百貨店と取引があります。
百貨店においては、九谷焼の常設売場にて、人間国宝や数多くの有名作家の作品を取り扱ってきました。また、宮内庁との取引の実績もあります。
これからも、お客様の声に真摯に対応し、九谷焼の発展に貢献していくことをモットーとしています。
九谷焼は古くから伝統工芸品として有名ではありますが、現代のデザインやライフスタイルに合わず苦戦しているところもありました。そこで、当社は、現代に受け入れられる商品づくりに注力し、例えば、イタリアの乗用玩具Rody(ロディ)とコラボレーションし、九谷焼の高い技術力とマッチさせた新商品を開発しました。本商品は小松市による「小松ブランド」に認定され、金賞を受賞しております。
九谷焼の特徴や魅力を知り尽くした上で、また、これまでの取引を通じて培った多くの作家との信頼関係がある中で、このように新しい取り組みにチャレンジできることが、当社の強みだと考えています。
九谷焼指ぬき「KUTANI THIMBLE(クタニシンブル、商標登録第5864151号)」です。シンブルとは西洋の指ぬきで、縫い物をするときに針の頭を押さえるための裁縫用具です。ヨーロッパでは女性に幸せを届けるラッキーアイテムとして愛されており、世界中にコレクターがいます。
たった3センチほどの小さなシンブルの上で、九谷が受け継いできた色絵、青手、赤絵の技を凝らし、現代の感性を巧みに織り交ぜながら九谷焼の作り手たちが描きあげたもので、それは、世界でここにしかないシンブルであり、指の先に広がる九谷焼の宇宙です。
同社は長く卸売が中心でしたが、九谷焼の優れた技術を発信し産地を活性化させるため、初めての自社商品開発に取り組んでいました。地元金融機関の支援のもと、新開発商品について中小企業支援センターの助成金への応募を目指していたところ、知的財産に関する課題が見つかり、金融機関より窓口に相談がありました。その後、窓口支援担当者が同社を訪問したのが、窓口活用のきっかけでした。
同社において商品の企画段階で市場調査を行ったところ、同業他社が同様なコンセプトの商品をすでに販売していることが分かったことから、このまま商品開発を進めて問題がないかについて相談を受けました。初めての自社商品開発で不安も大きかったようですが、弁護士の派遣を行い、丁寧に説明を行うことで、法律上の問題がないことや、万が一の対処法等について、徐々に理解を深めていただきました。
初めに商品コンセプトを立てる必要があると考え、窓口より、商標・ブランド専門家派遣の利用を提案しました。派遣された専門家から市場ターゲット等について助言・アドバイスを受けたことにより、商品化の方向性が明確になり、その後も、商標の活用や商標登録出願、また、模倣品対策に関しても、弁理士の派遣を行いながら検討を進めました。
大きく変化した点は、一つ一つの作業を通じて商品開発の手順を理解できたことだと考えています。そして、特に、開発初期段階で商標・ブランド専門家派遣を行ったことで、市場をしっかり見る必要性やブランディングの重要性について理解ができ、その後、知財でリスクヘッジや競争力確保が図れるか、また、商標登録の事業上の具体的な効果等について、段階的に理解が深まっていったと感じています。
当社はこれまで中小企業支援機関を利用したことがありませんでしたが、知財総合支援窓口をはじめ様々な機関に相談することにより、売れる商品を作るために何をするべきかが見えてきました。支援機関に相談したら何を言われるか、また、どのようなやり取りがあるかなどと、当初は不安もあるかとは思いますが、専門的な課題はその道のプロに相談することが解決への早道ではないでしょうか。
今回は初めての自社商品開発でしたが、今後新たに商品開発を行う際にも参考にしていただけるよう、様々な専門家を活用しできるだけ多くの情報をご提供するよう心がけました。いろいろな支援機関や補助金も上手く活用され、着実に事業化が進んだ印象です。九谷焼の魅力がどんどん発信され、産地が活性化するといいなと思います。 (山岡 佳代)
複数の専門家を活用した新商品開発(176.0 KB)
掲載年月日:2017年8月21日