当社は、仙台市の東に隣接し、奈良時代から平安時代にかけて、陸奥の国の国府・鎮守府が置かれた、多賀城市を拠点とする企業です。看板の企画・製作・取付・保守を一貫して行っています。工事実績のある地域は、東北6県の他、新潟県、栃木県、茨城県まで広がり、東北を中心に営業しています。
看板は高所に取り付けることが多いので、製作した看板の運搬・取付に、当社はクレーン搭載トラックを用いています。また、取付作業には、作業者が載るためのバケットを昇降させる機能を備えた高所作業車も必要になります。当社はクレーンのブームの先端に、バケットを着脱可能とすることで、両者の機能を一つに統合したクレーン車を開発し、業務の効率化を実現しています。
当社は、前記のクレーン車を自社製作し、業務に活用していましたが、これを見た同業他社から、同じものの製作を依頼されるようになりました。しかし、単に依頼に対応しているだけでは、せっかく開発したものが、模倣されることが想定され、特許出願により自社技術を保護すべきことに気付きました。そこで、新たな改良を加えた上で特許出願した結果、登録査定となりました。
同社が、前記の製品開発を行う過程で、経営課題を宮城県よろず支援拠点に相談をした際に、自社技術の産業財産権による保護について助言を受け、公的な支援機関として、知財総合支援窓口があることを紹介されました。
まず、窓口担当者が同社を訪問して、現場で実物を参照しながら、技術の特徴の説明を受けました。窓口担当者は、特許要件としての新規性の重要性と、新規性の有無の確認のための、先行技術調査の方法について説明をしました。これに基づいて、相談者がJ-PlatPatで検索したところ、類似技術が見出せなかったとのことで、相談者が作成した書類の内容について、窓口担当者が助言を行い特許出願と拒絶理由通知に対する応答を支援し、登録(特許第5856229号)に至りました。
同社は、宮城県よろず支援拠点の支援のもとに、当該特許に係る製品の販路開拓などを検討しながら、製品のモニタリングを同業他社に依頼し、安全性確保・作業性向上のための課題抽出に取り組んでいます。また、明らかになった課題の改良事項などについては、特許出願要否の再検討やブランド化の取り組みの検討に活かしています。
同社は、宮城県よろず支援拠点と知財総合支援窓口に相談するまでは、特許取得は非常にハードルが高い作業であると考えていましたが、特許出願から登録までの実務を経験し、その後は、自社技術をどのように展開して産業財産権で保護するかなど常に意識しながら業務に携わるようになりました。
従来の枠を超えた業務に取り組むにあたっては、様々な課題に直面することがありますが、今回は、宮城よろず支援拠点、知財総合支援窓口に相談したことにより、適切な支援を受けることができました。とにかく利用できる制度を、積極的利用することで、可能性が広がることを実感しました。
同社の場合は、自社の業務効率向上が出発点でしたが、今般開発した技術は、看板業界以外にも展開可能と思われますので、期待しています。新たな展開で、産業財産権に関わる課題が生じることも想定されますので、是非協力させてください。 (片平 忠夫)
高所作業用バケットの権利化の支援(347.8 KB)
掲載年月日:2017年9月 5日