当社は、杉・桧一般建築材の製造、構造用長尺材・化粧丸太の製材を行っています。当社の所在地である那賀町は高樹齢、大径木の杉に恵まれた林業の里で、伝統的な地場産業として材木や木材製品の製造・出荷が行われています。当社では、最低でも60年以上の大木をフルラインでオートメーション化した工場で、製品ごとの規格に沿って製材していきます。十分に天日乾燥した杉板を、手作業を交えながら丁寧に加工していきます。
手間ひまかけた天日乾燥などの仕事が、高い評価を得てきました。取り分け、右の写真の一括管理天然美節は、高い評価を得ています。
一括管理天然美節とは、次のような木材です。
1.含水率が18%以下に水分管理されたもの
2.内装材においては化粧材となるもの
3.壁・床・天井は死節補修されたもの
4.色黒は入っていないもの
開発商品「しっかり支柱」(商標登録第5940015号)、(意匠登録第1577942号、第1578947号、第1578948号)は、文字通り地中に簡単に打ち込むことができ、更に、長いポールを「しっかり支柱」の真ん中の穴から地中に入れ、ポールがぐらつくことがないようにした木工製品です。
現在、野生の鹿から山中に植林している杉などの苗を守るため、防御フェンスにより鹿の侵入を防いでおり、主に高齢者が、この防御フェンスの支えポール(長さ約200cm)を山の斜面等の足場が悪い場所で、ハンマーを使って地中に打ち込む作業を行っています。そこで同社は、高齢者でも簡単にポールを地中に埋め込むことができる木工製の支柱支持具「しっかり支柱」を開発し、作業の軽労化に貢献しています。
「しっかり支柱」は、支柱の形状などの改良を重ね、国有林向けへのサンプル出荷などを進めています。なお、支柱の改良に伴い、実用新案1件、意匠4件を登録しました。
同社が知財総合支援窓口に来られ、簡単にポールを地中に埋め込むことができる木工製の支柱支持具のアイデアについて相談を受けました。更に、配置専門家の相談を受けることとなりました。
同社より、当アイデア技術を使用した場合の効果について、試作品を使って詳細な説明がありました。特許、実用新案の概要及びそれぞれの違いについて説明し、J-PlatPatを利用した先行技術調査の方法についても説明しました。特許取得の可能性については、当窓口の配置専門家(弁理士)にも相談し、専門家とともに特許出願の支援をすることとなりました。
同社は、支柱支持具を前記防御フェンス用以外に園芸用品や農業資材用にも使えるようにするため、太さや長さの仕様や形状を変更したものを開発しました。また、支柱支持具用の治具も開発し、更に打ち込み作業の簡便性を増すことができました。開発については、徳島県立工業技術センターの連携支援を受け、知財については、優先権を主張した特許出願の支援を行いました。
加えて、同社は、これらの製品を国際農業資材EXPO(2016年10月幕張メッセにて開催)に出展することを計画していましたので、商品の特徴を引き出して、展示会用チラシを作成するため、中小企業診断士による支援も行いました。
同社の主な業務は製材業であり、建築資材など付加価値の高くない材木が主流製品でした。木材を使った付加価値の高い製品を事業化したいとの思いにより、今回の発明品にたどり着いたと考えられます。普段扱っている木材を使った商品であり、従来から培っている加工技術を使える分野でした。
知財総合支援窓口を活用して、知財取得にも前向きに取り組み、安心して事業化を進めることができました。
通常の業務に関係する分野で新しいアイデアに結びつきました。このアイデア持って知財総合支援窓口の門を叩いた結果、用途開発や違うアイデアを生む事が出来ました。自分一人だけで考えていては、ここまで発展したアイデアは生まれてこなかったと思われます。皆さんも、一人だけで悩まずに、知財総合支援窓口を訪問しては如何でしょうか。
同社社長の熱心さにより、最初の窓口相談より、ほぼ5ヶ月で展示会への出展となりました。その間、遠方から何回も当窓口を訪ねていただきました。現在、ものづくり支援事業により生産設備も整い、本格販売を進めている段階です。 (井上 修)
木工製の支柱支持具「しっかり支柱」の知財支援(659.3 KB)
掲載年月日:2017年11月20日
更新年月日:2020年3月25日