当社は、1981年に溶接工として独立後、様々な溶接技術を習得して地元の鉄工所として拡大、1989年に法人化しました。ここ静岡県島田市は茶産地であることから、特にお茶工場のあらゆる作業工程に独自アイデアを加え、機器の製造、修理等を行ってきました。
時代と共にお茶工場の在り方も変化し、安全対策、衛生対策等に力が入れられるようになり、防鳥・防虫に関して相談されたことにより、試行錯誤を繰り返して完成したのが、建物出入口の虫侵入防止用手動式スクリーンの『eco門』(登録商標第5313072号)です。電動式に比べて維持費等が掛らず、人の出入り用のファスナーを取付けて最小限で開けられる事が好評で、時代に合ったモノ創りとして害虫飛来に悩む様々な業界に取り入れられました。
当社は、『eco門』の成功により次への開発に繋げて行く事が出来ました。「年々、茶業界は厳しくなってきているので、お茶が売れるようなアイデアを考えてもらえないだろうか?」との声を受け、「エコ」と「携帯」という当時の流行語をヒントに、モノ創りのコンセプトを「携帯する事ができて、邪魔にならず、ゴミを出さない」として開発されたのが『携帯粉末容器』です。ペンの形をした容器を思いつき、細書きフェルトペンのインクの詰まっていた部分に粉末茶を入れる事で、持ち歩きができるようにしました。この『携帯粉末容器』と『eco門』の二刀流で、お茶生産者様には大きくアピールできるようになりました。常に新たな商品開発に取り組んでおり、創意工夫の製品ばかりです。
当社の一押し商品は、特許・意匠・商標の各知的財産権で守られた『携帯粉末容器』です。非常に単純な形状&構造ですが、先ず中身に何を入れるかで、茶業界の粉末茶に限らず、食品業界の粉モノ、ふりかけ、調味料、香料、はたまた化粧パウダー等と拡がります。筒のラベル印刷には、文字、写真、浮世絵等が展開できます。キャップ部分も、通常形状の他、キャラクター等の三次元形状化ができ、ペンスタイル自体で人気なのは勿論、これら展開の豊富さでノベルティグッズとしても用途が拡大しています。
当社は、虫侵入防止用手動式スクリーンのライセンス支援を行っていた特許流通アドバイザーから商標についてアドバイスを受け、知財総合支援窓口を紹介されたことが利用するきっかけとなりました。
当時、商標にも関心が高かったので、「今後使う予定でいる『好きだっ茶』を自分で商標登録出願したい」との相談が最初でした。漠然とした使用予定から指定商品の選定をアドバイスし、商標の先行出願と登録例の調べ方を指導しました。さらに、出願書類の作成方法等を説明し、出願手続きの支援を行いました。
虫侵入防止用手動式スクリーンは、当初『eco門』ではなく、別の製品名が付けられていました。その商標登録出願に対して拒絶理由が通知され、どのように対処したら良いかや弁理士とやり取りする上での留意点等について相談を受けました。ご自身で簡易調査を行ってみると、拒絶引用例の他、類似を含めて非常にたくさんの先行登録商標があり、先行商標の存在から想定されるリスクや、商標制度の本質や登録要件等を説明しました。その結果早々に『eco門』というネーミングを考えて商標出願し、権利取得しました。その後、携帯粉末容器の開発に当たり、特許権と意匠権の権利取得に対しても支援を行いました。
新製品を知的財産権で保護することの意識が定着すると共に、自律的に特許等出願を検討し、要所要所で相談に来られるようになりました。商標登録出願はほぼ自社で行い、権利の取捨選択も行っています。展示会等に積極的に出展して、種々のメディアにも取り上げられるようになりました。知的財産権は、他社との差別化を図り、製品の信頼を得ることのできる経営上の資産の一つであることを理解していただきました。
当社は社員も少なく、知財総合支援窓口を活用しなければオリジナル商品は生まれませんでした。創り上げたい製品・商品、アイデアを活かしたい企業様は、「夢」を持ち、この「夢」は知的財産で必ず守られますので、一歩、二歩、踏み出す前から御相談され、アドバイスを頂き一歩一歩前進あるのみです。
当社は地元の茶業界のために試行錯誤しながら新製品を開発しています。新製品を世の中に出す際において知的財産権の重要性を十分に認識している企業です。今後も知的財産権を活用しながら、事業が拡大していただけるような支援をしていきたいと思います。 (宮枝 清美)
知財を活用して喜ばれるもの創りを目指す(811.3 KB)
掲載年月日:2018年1月23日
更新年月日:2020年3月 9日