一般社団法人豊橋観光コンベンション協会は、豊橋市及び周辺地域の有する観光資源、地域資源を活用し、観光、コンベンション事業の振興を図ることによって、地域産業の活性化と地域文化、国際相互理解を深めることを目的としています。
観光振興活動としては手筒花火のPRの他、市内のうどん店と試行錯誤を重ねた「豊橋カレーうどん」の商品開発、各地イベント開催への参画、豊橋カレーうどん大使の任命、豊橋市長への登録報告(写真)など豊橋市を挙げて積極的に振興事業に取り組んでいます。
豊橋市は愛知県の南東部にある東三河の中心都市であり、同地方の人口の約半数を占めており、名所・旧跡としては、吉田城址、二川宿本陣資料館などがあることで知られています。観光スポットとしては、豊橋市美術博物館、豊橋総合動植物公園などがあります。また、安久美神戸神明社の祭礼、天下の奇祭「豊橋鬼祭」は、日本建国神話の田楽の舞で豊年厄よけの祭として約1000年前から毎年2月10日・11日に行われている神事で、国重要無形民俗文化財となっています。吉田神社発祥の手筒花火も、元禄元年より続く歴史ある神事として披露されています。
「豊橋カレーうどん」(写真)は当協会と豊橋市、豊橋商工会議所が発案し、業者との意見交換の結果、今までにない食材の組み合わせとして三層構造(最下層はごはん、その上にとろろを乗せ、自家製麺100%のうどん・カレーのルーを加えました)に、トッピングとして豊橋特産のウズラ卵などを乗せた商品で、鮮烈なお披露目を果たし、一躍豊橋市のご当地グルメとしてその名を轟かせました。この「豊橋カレーうどん」は2017年10月に地域団体商標として登録(商標登録第5990959号、権利者:豊橋商工会議所)され、各地のイベント開催地でも提供されています。
同協会は、「豊橋カレーうどん」が豊橋市のご当地グルメとして一躍有名になるにつれ、地域ブランドとして権利化し観光振興の取り組みに活用できないかと考えるようになられました。そこで地域団体商標としての権利取得の可能性やその出願手続き等について、ご相談いただいたことがきっかけです。
「ご当地グルメについて地域団体商標を出願したいのでアドバイスが欲しい」という内容でしたので、特許庁地域ブランド推進室、中部経済産業局知的財産室、専門家(弁理士)とも連携して、地域団体商標の登録要件、周知性証明書面等を確認し、それらの必要性などを説明しました。窓口担当者としては過去に豊橋市の別の団体で地域団体商標の取得支援をした経験を説明し、信頼を得ることができました。
特許庁地域ブランド推進室、中部経済産業局知的財産室、専門家(弁理士)と連携した専門相談を経て、提供した情報収集リストに基づき、周知性の証明には構成員名簿、売上額、イベント開催時の写真などを添付するようアドバイスし、地域団体商標登録出願を支援しました。早期審査の結果、構成員に関連する名簿・会費の証明書類等に一部不明瞭とする拒絶理由が届きましたが、連携先の適切なアドバイスによる中間手続を経て、約半年間で登録査定が得られました。
「豊橋カレーうどん」は、2010年に市内40店舗で提供を開始し、現在までに累計220万食を販売しました。商品を提供する「チーム華麗」会長は、「登録を機に初心に帰り販売努力を重ねて行きたい」と言われています。10年以上経過してもメディアに取り上げていただける事が多く、地域団体商標「豊橋カレーうどん」を取り扱っている約40店舗合計で売り上げが変わっていないことについては、ブランド価値が幅広く周知され地元に根付いた結果と考えられます。今後益々、ブランド力を向上して行こうという意気込みが感じられます。
(一社)豊橋観光コンベンション協会の通常業務においては、知財は殆ど関わることはないと思っていましたが、商標は、一つ間違うと他者から権利侵害の警告を受けますし、登録していなければ、後で、あの時権利化を図っていれば有効に活用できたのにと悔やむではないでしょうか。知財総合支援窓口では専門的な内容等について分かりやすい説明と助言を受けることができますので、知財に関して疑問や課題等ある場合には支援窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
同協会では「豊橋カレーうどん」の提供開始以来、売上額、イベント新聞記事、100万食突破パンフレット等の周知性を証明する書面がキチンと保管されていたので、早期に地域団体商標を権利化できたものと思っています。商標はブランド力を高めていく上で大きな役割を果たします。今後とも地元企業の活性化・地域ブランドの育成等に知財を活用して行かれることを期待しています。 (井上 勝)
「豊橋カレーうどん」が地域団体商標登録(574.4 KB)
掲載年月日:2018年3月 7日
更新年月日:2023年8月 1日