当漁協は、漁船漁業・養殖漁業を中心とした小豆島でも有数の漁港です。昨今の後継者不足・水揚量の減少の波は当漁協も例外ではありません。しかし、近年漁獲量が増加傾向にあった鱧(ハモ)に注目し、ブランド化を図り京阪神へ活魚を出荷するなど、事業拡大を推進し、関西市場において定評を得るまでに成長しています。更に、小豆島で鱧食文化を定着させ、観光客や地元民にも親しまれるブランドに育て上げ、新たな文化を創出することを目指しています。また、平成29年11月からは、鱧を加工した新商品の開発・販売も手掛けています。
一定の基準を満たした鱧をブランドとして管理蓄養することで、付加価値をつけた新たな小豆島ブランド「小豆島 島鱧」(商標登録第5944381号)として売り出しています。鱧は元来小骨が多く、調理には骨切りの技術が必要となりますが、当漁協では加工施設や骨切り機を導入しているため、一次加工(骨切り)が可能です。また、漁業者より直接、水揚げすることができるので、高級で調理が難しいイメージのある鱧を身近な食材の一つとして提供できます。
『活け〆骨切り瞬間冷凍』
鱧は、小骨が多く調理以前に技術を要する「骨切り」作業が必要です。当漁協では、骨切り機によって高速かつ衛生的に、またコストの削減と共に安定した「骨切り鱧」の生産が可能です。骨切り鱧を急速凍結することで、細胞の破壊を抑え、風味・食感・美味しさを保ったまま長期の冷凍保存も可能です。市場動向にも柔軟な対応ができ、「新鮮な鱧」の提供が常時可能です。
同漁協がある小豆島の海域では、近年鱧の水揚げが増加しており、この鱧の価値を高めるべくブランド化を企画しました。ブランドマークを保護したいので、どのような手続を行えば良いのか教えて欲しいと、同漁協の担当者が知財総合支援窓口を訪れたのがきっかけでした。このときは、ブランドマークを創作して、これを商標登録出願することをアドバイスしました。
ブランドマークは地元地域で公募を行い、最優秀作品を商標登録出願したいとの相談でした。そこで、まずはブランドマークの募集要項を作り、著作権は同漁協に帰属すること、著作者人格権は行使しないこと等を募集要項に記載しておくようアドバイスしました。
最優秀作品が決定したので、これを商標登録出願したいとの相談があり、この作品に類似する先行商標の調査方法、必要な商品・役務区分、指定商品・指定役務の選定、出願方法、出願~登録までの流れ及び費用、中間手続方法、登録料の納付手続等についてアドバイスを行いました。
商標登録の出願から登録までの全ての手続を自ら実施したことにより、知財に対する意識が高まり、商標を活用して、模倣品対策を考慮するようになりました。また、ブランド力強化のために、4つの基準(①小豆島近海で漁獲されたこと、②資源管理の側面から重量規定を設けた、③曳網時間は1時間程度とする、④漁獲から1日以上蓄養する)を設定し、徹底した品質管理を行っています。
ブランド化を行うと、少なからず類似品や模倣品が出回り、ブランドに悪影響を及ぼします。独自で管理するには、時間も費用も掛かります。商標登録はこれらの手間を省くだけでなく、法律的に保護されます。当漁協は知財の知識がありませんでしたが、知財総合支援窓口を利用したことで、効果的に知財管理が行えています。是非、知財総合支援窓口を活用して、知財意識を高めてはいかがでしょうか。
地元の漁場で水揚げされた鱧のブランド化を図るために、ブランドマークの公募要領、著作権の処理、商標の出願から登録まで、相談者を支援しました。鱧の品質管理を徹底し、湯引きは勿論、しゃぶしゃぶ、てんぷら、ソーセージ、餃子等、いろいろな商品の開発も順調に進展しています。 (黒田 茂)
ブランド化支援(670.0 KB)
掲載年月日:2018年3月12日
更新年月日:2022年12月 9日