ノースウッズは釣り具関連商品の企画・設計・製造を主な事業としておりますが、特にフライフィッシングにおけるタイイングツールやアクセサリーの自社企画、設計開発、量産をして参りました。2015年の創業より約2年が経過しましたが、これまでに12モデルの製品を開発し販売を行って来ました。
国内の釣り具業界におけるフライフィッシングの市場は小さく隙間産業の感がありますが、欧米においては意外と大きな市場が有ります。2015年に偶然、フライフィッシング関連製品販売が主力の釣り具メーカーT社に当社試作品が目にとまった事より、以後OEM受注生産を受け、釣り具各種の商品開発及び量産を行っています。
これまで趣味として30年以上続けて来たフライフィッシングやその他各種釣りの経験を基に、より合理性、且つ、デザイン性に優れたツールやアクセサリーを世の中に提供してゆく事を基本方針に、自由な発想から商品開発を行っています。構想からCADによる設計、3D-CADによるイメージデザイン図作成、顧客に対し3Dイメージ画像による商品提案から各社協力工場による試作品製作及び量産まで、一連の各工程を一元管理することで製品の商品化を短期間に具現化できます。また、商品の不具合に対する改善策、機能改善のための仕様変更等、小回りの利く企業を目指しています。
当社開発商品「アジャスタブルマグネットボビン」は、従来のボビンホルダーには無かったスレッドテンションの可変機能を、2個のネオジュームマグネット同士の吸着力を利用することで実現しました。フライのタイイング中に片手で自由にスレッドの巻き強さの調整が可能となり、より効率的で精巧微細なフライの作成を実現しました。現在、T社を販売元に、国内及び米国、欧州と世界各国にて販売中です。
また、現在、マグネットを使用しないランディングネット(タモ)用「イージーネットリリーサー」を開発し、従来のリリーサーの欠点である磁力による電子機器への悪影響や渓流での砂鉄吸着、それに伴う保持力低下を解決しました。当社製品はスプリングの伸縮力を利用することで、マグネットを使用せず、メカ的に自動離脱、衝撃緩和機能、離脱時に金属音を発するといた機能を実現しました。
釣りに用いるモノフィラメント(釣糸)を結束する便利な治具(アジャスタブルマグネットボビン)を考え、開発したので、それを特許出願したいとして、平成27年1月に窓口へ相談に来られました。
上記の相談を受け、まずは先行技術を調べることが必要であることを説明し、先行技術調査をJ-Plat Patを用いて調べる方法について説明しました。また、特許出願をするにあたり、特許請求の範囲を明確にする必要があることから、専門家(弁理士)も交えて支援することとしました。
その後すぐに起業し、この発明である治具の先行技術調査をご自身が済ませ、それをもとに本件発明と公知品との差異について議論し、記載すべき特許請求の範囲を明確にして、その過程で専門家(弁理士)の意見も聞き、特許出願を済ませました。その後審査請求を経て、一度は拒絶理由通知もありましたが、補正書の作成支援を経て、最終的に登録査定を得ることが出来ました。
特許を取ってビジネスをやりたいという意欲が最初で、考えたものが権利化でき、かつ、便利であることが認知されるようになり、特許を取得する意味の大きさを改めで実感できたと思います。ビジネスで商品を売る際に、排他権のある特許を保有することはビジネス上の自信に繋がると思います。
一押し商品に記載しました「アジャスタブルマグネットボビン」と「イージーネットリリーサー」共に知財総合支援窓口にて特許、意匠登録出願の相談に乗って頂きました。全く特許や意匠登録の知識が有りませんでしたが、相談に伺う度に親身に貴重なご助言、指導を頂き大変助かりました。
せっかくのアイデアですから、是非知財化による商品の付加価値向上に活用されることをお勧めしたいと思います。
本案件は釣り人にはすごく便利であると実感できる治具ですが、最初のヒアリングでは良さを完全に把握できず、徐々に便利さがわかるような製品の特許出願でした。窓口を利用する際、製品の良さを伝えることはなかなか難しい場合もありますが、窓口担当者に発明の良さを認識させることが、対特許庁へのアクションに有効になると思います。 (広島 政広)
掲載年月日:2018年3月19日