窓口支援事例
湯浅糸道工業株式会社
営業秘密・ノウハウ海外展開社内体制

知財クローズ戦略からオープン戦略への転換

企業情報

所在地
愛知県名古屋市
ホームページ URL
http://www.yuasa-yarnguide.co.jp
設立年
1963年
業 種
製造業
従業員数
75人
資本金
9359万円

企業概要

 当社は、1924年に創業し、1963年に法人化した会社で、織機等の繊維機械や巻線機等のワイヤー機械に使用される糸道(ヤーンガイド)の国内シェアトップの専門メーカーです。創業当初から、ヤーンガイドというニッチな分野に着目してひたすら技術力と営業力を磨いてきました。セラミックス、硬質クロームめっき、樹脂などの多様な素材を用いた自社開発のオリジナル製品を生産し、国内外の大手繊維メーカーの機械に使用されています。
 当社は、品質管理と安定供給には国内生産が不可欠だと考え、重要な工程は国内の自社工場で行っています。

自社の強み

 当社は、繊維機械・ワイヤー機械用糸道や、各種関連装置の日本で唯一のトータルメーカーです。国内、海外20ヵ国以上の顧客に販売しています。
 世界のニーズに応えることができる高品質な製品を安定して製造するために、自社製の生産設備・治工具を多く使用しています。また、製品品質を維持するための作業標準・工程管理・検査手順などの独自のノウハウが詰まった資料・マニュアルも多数あります。そして、全商品において全数検査に合格したもののみを販売しています。

一押し商品

 化学繊維の紡糸工程で用いられる「オイリングガイド」と呼ばれるセラミックスで製作されたノズルが世界中の多くのお客様に採用されています。
 オイリングガイドへは糸へ油剤を均一に塗布することが求められ、形状やセラミックスの材料が悪いと油剤の飛散による作業環境の悪化や、繊維の物性低下が発生します。当社は日本で化学繊維の生産が始まったと同時にオイリングガイドの開発を始めており、形状や材質を時代の変化に合わせて改良してきました。その結果、糸へのダメージが少ないセラミックスの開発に成功するなど、油剤を糸へ均一に塗布するためのノウハウを数多く保有しています。

知財総合支援窓口活用の概要(記:窓口担当者)

窓口活用のきっかけ

 同社は、顧客企業と秘密保持契約書等を取り交わすこと無く製品プロトタイプの使用評価を依頼したところ、競合する同業他社(台湾の企業)へ情報が流出し、当該プロトタイプと酷似する内容の実用新案が登録公報として発行されたので、特許庁に相談したところ、知財総合支援窓口を紹介され、名駅窓口に支援を求めたのが窓口活用のきっかけです。

最初の相談概要

 上記の相談を受け、持参された資料と情報をもとに、専門家(弁理士)を交えて対応を検討しました。同社へは、当該実用新案登録に対し先使用権を主張するには根拠が不十分であることを説明し、当該登録の権利範囲を明確にする必要があること等を助言しました。また、同社は相談案件のプロトタイプについての知財対応は何もしていなかったことから、同社の体制について見直し、特に中国市場を重視するのであれば知的財産権の重要性は一層増大することを説明しました。

その後の相談概要

 同社製品の主市場である中国において、中国企業が出願する実用新案等への対応、欧州特許庁の特許情報検索システムの活用法、公開公報に基づく侵害警告の考え方、秘密保持契約書の考え方とその日本語版及び英語版の作成、法律改正に伴う職務発明に関する規程、他社権利の権利解釈とその対応策、営業秘密取扱規程、先使用権の考え方、更に、主市場が中国であって競合会社が日本及び欧州の企業である現状を想定した知財戦略等に関する全社的な知財戦略の構築に向けた支援をしました。  今後、知財に関する環境はより厳しいものとなることが予想されます。今までは知財が問題にならなかった業界でも大きな問題となる可能性が高く、少しでも早く知財専門家の助言を得ることによって早い段階で対策を検討・実行することが有効であると考えます。少しでも知財の課題や悩みがある企業は、知財総合支援窓口の活用をお勧めします。

窓口を活用して変わったところ

 中国を始めとする外国企業による模倣対策として、過去約10年継続していた知財クローズ戦略の弊害から脱却し、積極的に知的財産を護り、活用する方向(効果的な知的財産権の取得及び先使用権の活用など)に舵を切り始めました。また、発明報奨制度及び営業秘密取扱規程の見直しと社員啓発活動等、経営トップである社長を筆頭に知的財産に関する認識が深まりつつあります。 


企業からのメッセージ

 今後、知財に関する環境はより厳しいものとなることが予想されます。今までは知財が問題にならなかった業界でも大きな問題となる可能性が高く、少しでも早く知財専門家の助言を得ることによって早い段階で対策を検討・実行することが有効であると考えます。少しでも知財の課題や悩みがある企業は、知財総合支援窓口の活用をお勧めします。

窓口担当者から一言

 2015年2月から約3年、1件の実用新案の問題から始まり相談企業の知財戦略まで、専門家の支援を受けながら一歩一歩前進してきましたが、それらを実践し果実として収穫する一連の活動の継続が最も大切であり、地道な努力を要すると考えます。今後は開発から営業までが連動して知財活動に取り組める体制の確立を期待しています。 (上野 哲郎)

知財クローズ戦略からオープン戦略への転換(227.4 KB)

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掲載年月日:2018年4月19日

更新年月日:2020年9月11日

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