当社は、創業明治35年(1902年)で、都城では最も古い歴史を持つ焼酎蔵です。都城盆地は、宮崎県の南西端、古くは薩摩藩の領地で、宮崎と鹿児島の両方の文化が流れ込み、地の利を活かしながら独自の文化で発展を遂げた「農林畜産業」の街です。また、都城盆地の地下には、霧島山系や滝部から湧き出る豊富な湧水が溜まり、清らかな水を大量に使う焼酎造りには、とても恵まれた場所です。創業112年の伝統を胸に、お客様が愉しんでいる様子を思い描いて「醸造」への挑戦を続けております。
当社の蔵の中央には、代々受け継がれた井戸があり、地下100メートルから150メートルの岩盤をくり抜いて作られています。この井戸から清らかな地下水を汲み上げて、素材(麦・米・芋・水)にこだわり、誠実さを感じていただける焼酎(大麦焼酎と芋焼酎)を人の手で丁寧に造っています。また、日ごろから親交のある蔵と協力して、宮崎ならではの焼酎造りにも挑戦しています。さらに、平成27年に開催されたミラノ国際博覧会への出展を契機として焼酎の海外輸出にも取り組んでおり、現在、国内登録商標6件、外国登録商標3件を有しています。
代表銘柄『駒(こま)』は、大麦の風味を活かすために、低温でじっくり蒸留し、丁寧にろ過・熟成した本格派の大麦焼酎です。『母智丘千本桜』は、創業当時から伝わる当蔵唯一の芋焼酎で、一時、製造が途絶えましたが平成25 年に35 年ぶりに復活を果たした自信作です。また、『青鹿毛』は、昨年、日本航空の『九州本格焼酎応援プロジェクト』で、グランプリを獲得し、JAL国際線ファーストクラスラウンジにおいて提供されました。
当窓口の知財アドバイザーによる普及活動の訪問で窓口の支援内容に関心を持って頂いたことがきっかけです。知財アドバイザーから連絡を受け、すぐに窓口担当者が訪問して窓口の支援事例や商標権の制度について説明しました。その際、同社から35年ぶりに復活させた『母智丘千本桜』を商標登録出願した結果、拒絶査定を受けた話しを伺いました。
『母智丘千本桜』の拒絶理由の内容を確認し、専門家(弁理士)派遣による支援を提案しました。拒絶理由を解消するための出願態様について協議し、『母智丘千本桜』の再出願を支援しました。審査の結果、拒絶理由通知が届きましたが、再度、専門家(弁理士)を派遣し、意見書、手続補正書についての支援を行った結果、無事登録することができました(商標登録第5931755号)。
焼酎の海外輸出に取り込まれるとのことから、連携機関であるジェトロ宮崎のアドバイザーを紹介しました。また、INPITの海外知的財産プロデューサーを派遣して海外展開における商標戦略について助言するとともに、外国出願支援事業を活用した商標登録出願についても、公益財団法人宮崎県産業振興機構の担当者を紹介して支援しました。
焼酎の銘柄を商標権で守る大切さは理解されていましたが、専門家派遣を含む支援によって、文字だけが商標ではなく、必要に応じて出願の態様を使い分けることを理解されました。また、海外知的財産プロデューサーの支援によって、海外展開する場合の知的財産権の活用意義や戦略についても認識されました。
商標権のことは知っていましたが、窓口の支援を受けて商標権の機能や本質を改めて理解することができました。窓口の方には気軽に相談できますし、専門家を派遣して頂ける制度は大変ありがたいと思います。
同社は、焼酎のラベルデザインにも拘り、ホームページでは、水割り、ロック、ソーダ割、シャーベット、ピクルスなど、焼酎のおいしい飲み方や楽しみ方を提案されています。今後も伝統に挑みながら新商品を開発されると思います。ブランド化に向けて今後も支援させて頂きます。 (轟木 博)
商標権取得と海外展開支援(255.5 KB)
掲載年月日:2018年5月 2日