福島県の県都・福島市で、業歴80年以上の歴史を重ねる当社は、印刷用和洋紙(コピー用紙を含む)を中心に、板紙、特殊紙、またティッシュ・トイレットペーパー等の家庭用紙など、多種多様な紙製品全般を取り扱う紙卸売業者です。さらに、農業用資材も取り扱っており、主に果物のネットやキャップ、パック、段ボール等の梱包資材の仕入れ販売を行っています。
「迅速・丁寧・親切」をモットーにお客様のニーズに応え、県北地方及び相双地方を中心に営業、配送業務を行っております。また、当社は製品に使用されている木材を適切に管理しており、環境に配慮したFSC森林認証取得企業です。
当社の強みは、独自のシステムにより、オーダーに応じたサイズの紙を裁断しご提供することが可能であることです。
また、紙卸業社でありながら、農業用資材も取り扱っていることが挙げられます。福島県は“くだもの王国”といわれ、全国でも果樹栽培の盛んな県であり、もも、ぶどう、なし、りんご、かき、さくらんぼなど多彩な果実の出荷用の梱包資材や果実用ネット、キャップ、栽培用の果実袋などの仕入れ販売を行っており、売り上げの2~3割を占めるまでになっています。
今年度、果樹農家と和紙職人との連携により新規開発製造した、果樹(もも)の剪定枝をリサイクル活用した和紙が一押しです。この和紙の製造販売に関する新規事業を立ち上げ、ブランド名を「咲色SAKIIRO」、手漉き和紙及び機械漉き和紙の名称を「福咲和紙」として展開中です。手漉き和紙は桃の枝から自然ににじみ出たほのかな桃色が特徴です。また、桃の枝をチップ化し工業的に製紙した機械漉き和紙も、ほんのり桃色の印刷適性のある和紙です。これらは、平成30年6月10日に福島県で開催される第69回全国植樹祭の招待状用紙として採用されました。
同社は果樹農家及び手漉き和紙職人と連携し、果樹栽培において欠かすことのできない作業の一つである、整枝剪定作業時に切り出される大量の枝等(廃棄物)を利用した、新たな紙製品の開発プロジェクトに取り組んでおられました。鋭意研究と試行を重ね完成した開発成果(手漉き和紙)を知的財産権で保護できないものかと考えられ、当窓口にお問い合わせいただいたのがきっかけとなりました。
本プロジェクトの目的やコンセプト等を確認しながら、将来的なビジネス展開に応じた知財保護(ノウハウを含む)及び活用方法等について説明を行いました。すでに開発成果の情報を公開しているとの事情から、早急且つ適切な手続きを踏んで特許出願をする必要があったため、具体的な手続きや専門家活用のタイミング等を整理し、策定した知財スケジュールに沿って出願手続を進めることになりました。
開発成果に係る特許出願及び商標登録出願の完了に伴い、初の自社商品としてカタログに掲載(主力商品としてラインナップ)し、自社が有する流通ルート経由での販売も開始しています。
現在は、福島県産業振興センターと連携支援し採択を受けた「開発製品可能性調査・市場調査事業費助成事業」の調査結果を踏まえて進めている新たな用途開発と本プロジェクトのブランド化について、知財面からの継続支援を行っています。
SNSによる情報発信が個人でも手軽に行われる今日では、知らないうちに知財に相当する情報が一般公開となり、知財保護や知財活用が十分にできないケースが多くなっていることがわかりました。新規開発分野において、自己の利益を保護するためにも、可能な限り新規開発製品を知財で保護することが、継続的に安定して販売するには必要不可欠であることを同社は理解されました。
初めての開発及び知財活動に取り組むにあたり不安な面も多々ありましたが、窓口を通じた各専門家や支援機関との連携支援を受けながら開発を進めることができたことで、卸売が中心の当社が、自社商品の開発に成功し新規事業を立ち上げられるまでになりました。今後新たな取り組みを始めようと検討している企業様がおられましたら、まずは知財総合支援窓口に相談してみることをお勧め致します。
電子化が進み「紙」に触れる機会が減少しつつある今日において、あえて「紙」に拘り開発した「福咲和紙」は、その完成度の高さや地域特性を活かしたストーリー性のある魅力的な商材として各分野の方々が関心を示し始めているようです。今後も新規事業の発展のため窓口支援担当者としてお役に立てるよう頑張りますので宜しくお願い致します。 (金澤 延人)
地域特性を活かした6次化商品の開発支援(473.4 KB)
掲載年月日:2018年5月23日