当社は、鳥取県の中部に位置する小さな街、倉吉市にあり、建設コンサルタント業を中心に、屋上等の緑化事業や道路・河川の降雨量・水位を観測するシステム等の開発を行っている企業です。
建設コンサルタント業にあっては、これまでのお客様の多様な要望にお応えしてきた実績を基に、効率的で安全性、利便性に優れた公共インフラとその諸設備について幅広く提案を行っています。
また、新たに医療福祉業界向けの製品開発に取り組むなど、既存事業の枠を超えた新たな事業分野へも挑戦しています。
当社の基幹事業である建設コンサルタント業では、公共インフラである道路や河川の映像監視システムや照明設備等を設置する必要があるため、幅広い業種の企業との交流が必要となり幅広い人脈を構築しています。
この人脈を生かし、当社としては全く新しい事業である医療福祉業界向けのMittellを完成させることができました。そして、これからも事業の枠を超えた新たなことにチャレンジしていきます。
病院や介護施設において、入院患者の高齢者割合が増加している中、現場では少ない人数で多くの患者のケアを行う必要があるなど、安全対策をとる上での問題点も多く存在しています。当社は、これらの問題に真摯に向き合い、Mittellの開発をスタートさせました。
このMittellは、ベッド上の患者が起床したり離床したりしたことを、カメラを使って検出し報知する装置です。大手電機メーカーの技術をベースに、当社が独自に医療機関で行った実証実験での課題を設計にフィードバックすることで、今まで難しかったベッド上での起床と離床とをそれぞれ高精度で識別し検知することが可能です。
同社は、(公財)鳥取県産業振興機構(以下、機構という。)主催の知財ビジネスマッチングをきっかけに、大手電機メーカーからの技術供与により病院や介護施設におけるベッド上の患者の状態センサの開発をスタートさせました。開発と平行して営業活動を行っていくために、まず商品名を検討したいとして、機構の支援員の紹介で知財総合支援窓口に商標登録出願の相談に来られました。
「商品名を商標登録出願したいので出願手続き方法を指導して欲しい」という同社に対し、商品名を検討する際は第三者の商標権を侵害しないようにすることが重要であることを説明し、商標調査方法の説明を行いました。そして同社は、複数の商品名案の中から商標調査結果に基づき使用する商品名を『Mittell』と決定されたため、商標登録出願の手続き方法についてアドバイスを行いました。
その後、商品開発を支援している機構の支援員より同社製品と競合する製品を他社が開発中との情報を得たため、機構の支援員と開発状況等について情報を共有しながら、他社に対する優位性を確保するため専門家(弁理士)を活用し特許及び意匠登録出願について支援を行いました。また、ノウハウを営業秘密として管理する社内体制構築のため、INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口と連携して支援を行いました。
同社はものづくりの経験が浅く、知財の重要性についての認識もあまりありませんでしたが、特許等の出願検討により他社製品に対する自社製品の強みが明確になったとして、営業活動に自社の知財を積極的に活用されています。また、INPIT営業秘密・知財戦略相談窓口による営業秘密に関する社内セミナーに従業員を積極的に参加させるなど、社内の知財マインドの向上を図る活動を行われています。
知財のことは全くわかりませんでしたが、商標登録出願だけでなく、商品開発に平行して適切なタイミングで特許や意匠登録出願について支援していただき、商品化に漕ぎ着けることができました。知財の知識が無くても、知財総合支援窓口へ相談することにより、ものづくりにおける知財面の支援を幅広く行っていただけるので、気軽に相談されれば良いと思います。
Mittellの開発により「ものづくり」のノウハウの習得と、「ものづくり」事業における知財の重要性について理解されています。今後の同社の新商品開発等にMIttell開発の経験が生かされるものと確信しています。 (澤田 宏二)
初めてのものづくり 商品を知財で幅広く保護(165.1 KB)
掲載年月日:2018年7月 2日