当社は1905年の創業以来、「地域とともに歩み、地域に貢献していく」ことをモットーに建設業を通じてお客様から信頼をいただいてきました。また、須山グループとして各分野のエキスパートを揃えた須山建設とグループ9社の総合力を結集し、お客様のあらゆるニーズや課題に対応するべく建築・土木・マンション事業等に関するすべての工程を自社グループ一貫にてサポートしています。
2015年4月1日には、すやま創意くふう研究所を設立し、これまで継続してきた業務改善活動をより充実させ、ものづくりに対する創意くふうの提案を実践しています。
43年間継続している「業務改善活動」、24年間続いている「VE活動」、2003年から始まった「SPS 活動*」等、これらの活動を全社一丸となって取り組むことで確実な成果を残しています。既存のやり方を徹底して改善し、ムリ・ムダ・ムラを省き、生産性向上を念頭に、新技術・新工法に積極的に挑戦しお客様のニーズに確実に応えるとともに、時代の変化に対応すべく様々な分野において積極的に社会貢献活動の充実を図っています。
*SPS(Suyama Production System)活動:トヨタ生産方式を建設会社にあわせた独自の手法 注)VEリーダ-335名はグループ全体の人数
すやま創意くふう研究所が関わった商品が二つあります。一つは「コンクリート余剰水除去再振動ロボット」(特許第7066167号)です。一般的に、土間コンクリート打設時に打設後余剰水が滲出し、これが左官の金鏝仕上げ作業の妨げになっていました。更に、この余剰水はクラック等の発生要因とも考えられており、これを早期にタンピングにて発生させ吸水することにより左官の手間を楽にし、且つコンクリート品質の向上を図る目的で、このロボットが開発されました。更に再振動工法にも取り組みその効果が実証されています。
もう一つは「コンクリート工事に使うコードレスバイブレータ」です。通常の高周波バイブレータの場合、三人の作業員が必要でしたが、リチウムイオン電池を採用したコードレスバイブレータにより、一人での作業が可能となりました。
同社と大学との共同研究による「コンクリート床用の移動吸水手段」に関する特許出願をされており、同社がその出願に関する補助金の相談をしたいとのことで、公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構の経営コーディネータから紹介いただいたことがきっかけでした。
「近年、建設業界も人手不足で作業員の確保に苦慮しており、さらにまた数年後に東京オリンピックをひかえ一層深刻な状況になってきている。そのような背景から作業のロボット化研究を大学と共同で始めた」との経緯と、「コンクリート床用の移動吸水手段」についてご相談内容を伺いました。詳細を説明していただいたところ、多数の発明があることがわかり、複数の特許出願が必要である旨助言しました。その後同社は大学と共同出願し、権利化に至っています。
また、コンクリート打設用バイブレータに関する相談もいただきました。このバイブレータは、コンクリート打設の際に振動を与えることにより内部の気泡を除去し、骨材の均一性を図り、密度を高めることでコンクリートの強度を確保するために不可欠なものです。これらについて発明者、専門家(弁理士)、窓口担当者の三者でブレーンストーミングを行い特許出願につなげました。さらなる改良に関しても継続してご支援させていただいています。
これら製品は現場で使われ、作業効率の向上に結びついております。また、大学との共同出願が実現したことにより、同社の技術的評価が高まりました。
建設業は建設工事の完成を請負う事業が主で、自社製品が主である製造業と違って特許には縁遠かったというのが正直なところと思われます。しかし、時代の変化や特許を取得するメリットが見直され、創意工夫を促進しアイデアを保護する特許の重要性を認識していただいたと感じます。
初めは構えていた特許出願作業が、知財総合支援窓口の親切な指導でスムーズに運び、又費用の面でも思いのほか安く済み、大変お世話になりました。経験豊かなベテランのアドバイスは大変参考になりました。是非、同窓口を活用されることをお勧めします。
建設業界の人手不足の課題をロボットや技術で解決しようとする同社のチャレンジは、新しい時代を切り開く取組みとして大変期待しています。問題解決はなかなか困難ですが、専門家活用も含めた支援がお役に立てば幸いと思っています。
(近藤 達憲)
コンクリート余剰水除去ロボットとコードレスバイブレータの知財支援(277.0 KB)
掲載年月日:2018年8月29日
更新年月日:2024年2月19日