当社は新潟県南東部にある南魚沼市に位置しています。越後三山の一つである霊峰八海山の裾野に広がる魚沼盆地に大正11 年より酒蔵を構え、高品質な酒造りに励んでおります。低温多湿な冬と、淡麗な酒造りにとってこの上ない環境の八海山系の仕込み水を活用し、「普段飲む日本酒のスタンダードを高めたい」、「よい酒をできるだけ多くの人にお届けしたい」という考えのもと、人為を尽くした酒造りをしております。
当社では、八海山系の伏流水(藤原神社に噴出する御神水「雷電様の水」)を蔵まで引き、仕込み水はもとより、すべての酒造りで使用し、「大吟醸酒製造技術を全酒類へ応用すること」を行っております。
そのために産地にこだわった酒造好適米を高精白に磨き上げ、手造り麹、小ロット長期低温発酵もろみなど吟醸酒製造法を採用し、伝統的な手法に基づき、工夫に工夫を重ね、技術に磨きをかけております。
「特別本醸造 八海山」は冷でよし・燗でよしの、八海山を代表するお酒です。燗をつけたときのほのかな麹の香りもまた、このお酒の楽しみの一つといえます。
「麹だけでつくったあまさけ」は酒造りで培った技術で麹をコントロールし、すっきりとした上品な味わいに仕上げました。ブドウ糖やビタミンB 群、アミノ酸などを含んでおります。材料は魚沼の清らかな水と麹だけ。ノンアルコールなので子どもにもお年寄りにもお楽しみいただけます。
同社は、外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)を活用し、海外へ商標登録出願を行っていました。特許庁の産業財産権専門官が同社に訪問した際、海外での権利取得に関する課題があるとのことで、INPIT 海外知的財産プロデューサーによる支援を行うこととなり、窓口担当者も同席したことがきっかけです。
同社は海外においても商標権を多く所有しており、維持に係るコストの負担が大きいことが課題であったため、INPIT 海外知的財産プロデューサーより、ブランド戦略や権利管理規程の見直し、商標の棚卸、海外商標の更新手続方法について助言を行いました。また、海外代理店の商標使用にトラブルが生じないよう、「商標使用マニュアル」を作成することや、売上の基礎として認識していたブランディングは、コーポレート・アイデンティティが重要であることの助言を行いました。
商標の権利維持管理について、海外の商標については、連携機関であるJETRO 新潟に現地代理人に関する情報を提供いただくよう依頼しました。一方、国内の商標権については、自社で更新手続や権利維持管理が可能となるよう支援を行いました。また、新商品の名称を検討する際の先行調査方法の指導や、自社で商標登録出願を行う際の手続支援のほか、商標登録の可能性や効果的な出願方法について、専門家(海外知的財産プロデューサー)との協働支援に努めました。
同社は、これまで出願から権利維持管理まで特許事務所に依頼していましたが、窓口での継続支援により自社で商標登録出願の検討を行うなど、知財に対し積極的に取り組む体制が整いました。
自社で行うことにより権利維持管理の経費削減になり、新商品の商標も随時登録出願しています。何より商標についての理解が深まり、知財意識と実務能力が高まりました。効果的な商標登録出願が行われるようになったことが、企業にとって大きなメリットとなっています。
窓口では、専門家の意見やノウハウ、他社の事例など丁寧にわかりやすく、親身になって教えていただけます。商標の取得は、特許事務所にお願いすることも可能ですが、自社で登録出願することで経費削減できるだけでなく、商標制度の理解が深まります。ぜひ知財総合支援窓口に相談されることをお勧めします。
同社は、国内では90 件、海外でも数多く商標権を所有しており、積極的に権利を活用し経営に役立てております。特許事務所とも良い関係を築きつつ、自社で取り組める部分は積極的に取り組むという体勢が整ってまいりました。
新潟といえば「米」「酒」です。地域産品によるブランディングの確立により、新潟の良さを更に発信していただきたいと思います。
(伊藤 里子)
自社での出願・権利維持管理による知財意識改革(402.1 KB)
掲載年月日:2018年9月 5日
更新年月日:2021年4月 6日