当社は、高温高圧技術を生かした超臨界システムで水・炭酸ガスを反応場として新しい材料創製並びに装置の開発を行ってきました。このプロセスの開発は産学連携で始めたもので、既に20 年が経過し、今日ようやく実用化の段階にはいりました。エネルギー関連および環境関連ビジネスは時代とともにますます拡大します。これら機能性ナノ粒子合成技術の実用化を加速して、循環型社会構築に必要な次世代先端材料の提供を通して社会のお役に立てるように頑張っていきます。新規事業として、超臨界技術により生成した機能性ナノ粒子による透明スクリーンフィルムを開発し、販売を開始しました。
当社は、設立以来、「エコロジ&テクノロジー」をキーワードとして環境に優しい製品開発を手がけています。2007年から2011年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、東北大学と産学共同研究で、「超臨界ナノ粒子合成装置」を開発し、機能性ナノ粒子材料ビジネスを開始しました。又、高度な超臨界技術を利用して「超臨界CO2 抽出装置」や「超臨界CO2洗浄装置」などを開発し、高機能性食品の抽出や半導体精密部品洗浄・乾燥など、様々な用途に使用されています。当社は、ファブレスで、プロセス開発や、エンジニアリングが主体ですが、営業、開発、検証などすべての社員がマルチで対応し、オリジナリティとハイテク技術で新商品開発に取り組んでいます。
当社の新製品:「パルミルスクリーン」(商標登録第6027583 号:「パルミル」)は、培ってきた超臨界技術により開発した透明スクリーンフィルムです。特に色再現性にこだわっており、窓ガラスやアクリルなどの透明体に貼っていただくと、簡単にプロジェクター等で映像投影が可能です。透明度が高いため、ガラスに貼っても透明性を維持できます。当社独自の機能性ナノ素材を応用しているため、透明度を維持したまま、プロジェクターの映像を映すことができます。視野角が広く、360°どこからでも映像が見えます。光拡散性が高い特徴のナノ素材を利用することにより、透過性が高く、高鮮明で、デジタルサイネージ市場の拡大に比例して需要が見込まれます。
堺市産業振興センターの紹介を受けて、同社を訪問したことがきっかけでした。同社が、これまで製造販売してこられた、高温高圧装置やナノ粒子製造装置とは異なる付加価値の新事業を立ち上げたいので、事業戦略と知財戦略について支援してほしいとの要望がありました。
同社の透明スクリーンフィルムの新事業の位置付けと差別化技術を明確にするため、中小企業等特許情報分析活用支援事業により、他社特許調査と技術動向調査と競合分析を行いました。また、化学分野に精通した専門家(弁理士)を派遣し、特許出願と国内優先権主張出願、専門家(ブランド専門家)によるビジネス展開についての助言を行いました。更に、透明スクリーンフィルムの商品名「パルミル」の商標登録出願を支援しました。
同社の海外展開を視野に、日本特許出願を基礎としたPCT国際出願、日本商標登録出願を基礎にマドリッドプロトコルによる国際商標出願、グローバルブランド戦略を支援しました。透明スクリーンフィルムの販売戦略を明確にするため、スクリーン業界の製品化動向、参入企業の販売動向など市場調査を行うよう助言しました。また、中国企業との販売契約など、事業戦略と知財戦略を一体的に支援しました。
同社は、超臨界技術をベースに生産設備用装置、機能性ナノ粒子製造装置などを手掛ける研究開発型企業ですが、新規事業の透明スクリーンフィルムは、これまでの顧客層とは異なるビジネス領域でした。この新製品の開発にあたり、国内外の特許調査を十分に行い、社内一丸となって、ビジネスモデルを明確化して、戦略的に特許出願されるようになり、社内の知財意識が大幅に高まり、知財力が向上しました。
知財総合支援窓口は、アイデア段階から事業化まで、特許のみならず、知的財産権全般について丁寧に支援して頂けます。新商品の開発、新規事業の立上げにおいても、特許、商標、契約など種々の分野の専門家を派遣して、戦略的に支援して頂けます。知財を中心に巾広く相談にのって頂けますので、ぜひご相談ください。
同社は、超臨界技術で製造した機能性ナノ粒子などを手掛ける研究開発型企業です。透明スクリーンフィルムの新事業を、社内一丸となって取り組まれ、知財戦略と事業戦略を一体的に、集中的に支援できたことを嬉しく思います。引き続き、デジタルサイネージ市場の拡大を見込んで、新規ビジネスの拡大を支援致します。 (大野 健造)
透明スクリーンフィルムの事業戦略と知財戦略(480.6 KB)
掲載年月日:2018年9月26日