当商工会では、事業の一部として、長野県地域産業活性化基金助成金事業に採択されたテーマ「干し柿の加工残渣(皮等)の色差分解処理による機能性食品原料の開発と事業化」の推進のため、異業種企業を含めたプロジェクトチームとともに、以下課題の解決および事業化に向け取組んでいます。
従来、干柿の製造工程で発生する皮等の加工残渣は大半が廃棄処分されていましたが、植物性タンニンをはじめ多種の有効成分が多量に含まれていることに着目し、それを抽出し高機能性食品原料として有効活用する技術を確立しました。残渣が減ることによる環境負荷の低減にも寄与します。
当プロジェクトが開発した技術により抽出した「柿タンニン含有精製品」 は、防カビ試験、保存試験(生菌測定検査)、砂糖代替効果試験(官能検査)により、高機能性食品原材料としての安全性・有効性を見出しました。
防カビ、抗菌性、抗酸化性、保湿性などに優れ、食品の日持ちに役立てられることや、単糖類の含有確認により、食品の低糖度化や低カロリー化など、健康志向商品の提供が可能となります。
当プロジェクトの一押し商品は、独自開発の柿タンニン含有精製品から用途開発した柿タンニンパウダー、柿皮エキスです。これら商品は、先述のとおり防カビ、抗菌性、抗酸化性、保湿性に優れた食品原材料であり、食品に添加することにより静菌効果が発揮され日持ちが良くなり、年々高まる健康志向のニーズに合致します。
また、食品特有の臭みを抑制し食べやすくなる、砂糖の含有率を抑えても黒糖の様なコクが増す等の効果も期待できる、優れた高機能性食品原料であります。単糖化された糖類(グルコースや果糖)の他に、ホウレンソウに匹敵する程のβカロテン(抗酸化物質)が含有されている事が、成分分析試験成績表より判明しています。
同プロジェクトチームで開発した柿タンニン含有精製品の抽出方法及び抽出物を、特許で保護できないかとの相談が当支援窓口にありました。
ご相談内容を詳しく伺い、知財制度をご説明するとともに、技術的観点については当窓口専門家(弁理士)からアドバイスを受けていただくよう勧めました。技術的特徴があり特許性がある可能性が高いとの専門家の見解を参考に、後日、同プロジェクトチームは出願準備を進め、特許出願されました。
その後、プロジェクトを進めるに当り、製造装置及び製造方法についても模倣防止のため特許で保護したいという相談を受け、同様に専門家(弁理士)とともに支援し、特許出願に至りました。
さらに、柿タンニン含有精製品の用途開発及び売上拡大のため、商標登録出願およびブランド化を図る際にもご相談を受け、専門家(弁理士)を活用いただきました。特に、商標の種類や機能、メリットや維持費用等について、同専門家とともに指導し、プロジェクトメンバー全員で商標の重要性を認識していただきました。後日、商標を選定して商標登録出願し、登録に至りました(商標登録第6087259号)。
高機能性食品原料である柿タンニン含有精製品は、食品への添加により低糖度化が図れ、健康志向の消費者に対し需要増が期待され、知的財産を活用しての販路拡大が期待できます。以前から、特許による技術の保護の重要性は認識されていましたが、商標を活用して、お客様に商品の名称及び特徴を理解してもらうことの重要性をプロジェクトチームの方々に認識していただけました。知的財産を活用し事業を発展させるため、まずは当支援窓口に相談し、知財活用策を検討したうえで実行したいという考えを持っていただけたことも、成果の一つと捉えています。
開発した商品、技術を保護し、お客様への情報発信のために特許、商標等の知的財産を活用することが重要であると認識しました。
今後も、高機能性食品原材料の用途開発を進め、お客様への情報発信、権利保護のため、知的財産を活用したいと考えています。皆さんも仕事の上で開発した商品、技術を発信し守るため、知財総合支援窓口の活用をお勧めします。
今回、従来廃棄している干柿の残渣を有効活用できる技術に感銘を受けました。また、抽出物も高機能性食品原料として利用でき、残渣を減らすことにより環境負荷低減も可能であり、社会に対する波及効果が高いと思います。開発した商品、技術を世の中に発信し、また、他者からの模倣を防止するため、特許、商標等の知的財産を活用することが重要です。何か新しい商品、技術を開発した場合、新たな商品等の名称を決めた場合は、まず、知財総合支援窓口にご相談下さい。 (山崎 雅彦)
干柿残渣の抽出物の高機能食品原料化及び高機能食品の商品化(147.0 KB)
掲載年月日:2018年11月21日