当工房は、高知県中部に位置する高知市で、日本独自の着物の美しさを引き立たせる造花、造花装飾体の製造、販売を行っています。
この造花、造花装飾体は、縮緬などの布素材と、土佐和紙のもみ和紙などの紙素材、レザー素材等を、特許技術を駆使して組み合わせたものです。仕上がるまでの工程において、数回の防水加工やUV加工が施されています。また、花弁や葉などには刺繍や金粉なども施し、日本独特の優美さや華麗さを醸し出しています。日本が誇る花文化の、新たな切り口として発信しています。
1976 年にフラワーデザインスクールを設立後、アメリカ留学など数回の海外研修を通じてフラワーデザインの技術を研鑽し、国内外のコレクションに出展、受賞を重ねながら、持ち前の意欲とセンスの良さを生かし、お客様の要望に合ったフラワーデザインの技術を確立しました。この長年を掛けて築いた技術を、日本の優雅な伝統美をもつ着物への融合を図り、開発した技術は特許権を取得しました(特許第5379319号)。作品例として、特許技術を活用して製作した“丸形組つばき”(右写真)があります。他社品とは差別化された、日本の伝統文化と現代アートが融合した作品です。
手毬は、その丸い形状から、家庭や家族を幸せに丸く治める縁起物といわれております。この所以より、結婚式で花嫁さんがもつブーケ用に、当工房の特許技術を活用して開発したのが、手毬のような形をした和風のブーケ“手まりぶーけ”です。この“手まりぶーけ”は、他社品との差別化 を図るために商標登録(商標登録第5678246号)も受けています。
以前、相談者は自身のアイデアを他人・他社に真似された苦い経験があることから、この度開発した加工技術を知財で保護したいと思い、特許権などの権利化の必要性を感じられ、相談に来られました。
特許権での権利化には、まずは特許出願をすることが必要で、第三者の特許権を侵害しないようにすることが重要であることを説明し、先行技術調査の方法をご説明しました。この調査結果を踏まえ、新規性・進歩性の有無の助言は、万全を期すために、専門家(弁理士)による支援を行いました。その後同社は、有効・効果的な権利範囲を確保できる特許出願に纏められ、その出願手続きについても支援しました。
特許出願に合わせて、特許技術商品の販路開拓を検討されていましたので、特許・技術に合わせて商品名(・マーク)の権利化も有効・効果的であるとの説明も行い、商標出願の支援も行いました。
特許出願、商標登録出願は、拒絶理由通知を受けましたが、この技術や商標についての見識が高い専門家(弁理士)による支援を紹介し、活用することでどちらも登録を受けることができました。
産業財産権制度の基礎からの理解度も高められ、製品技術の開発や権利の保護への取り組み方が大きく変わられたようです。その結果として、新製品の開発についても、知財・特許を意識した開発が行われる様になったと思われます。また、知的財産権や海外展開や営業秘密などのセミナーにも積極的に参加されて知識・見識も高められています。
知財のことはほとんど分かりませんでしたが、特許出願だけでなく、商品開発に合わせて、タイミング良く商標登録出願についても支援していただきました。特許登録や、商標登録を自分でできるとは思ってもいなく、大きなご褒美を頂いた気持ちになりました。知財総合支援窓口では、出願の支援に留まらず、事業展開に欠かせない販売戦略や営業秘密や契約などの専門家によるアドバイスも受けることができ、これらの支援で得られたアドバイスを活かして販路開拓したいと思っています。
相談者は、製造から販売までの主要部分はほとんど一人で行われていますが、長年培ってきた高い技術やセンスの良さや努力と、特許権や商標権での権利化が相まって、東京の大手百貨店での催事販売に出店できるまでに至っています。この特許製品は、高知県の代表的な和紙の特性を活かした製品でもあり、高知県産業の発展にも寄与するものであり、ますますのご活躍を期待します。
(柏井 富雄)
造花・造花装飾体加工技術・商品名の権利化(223.8 KB)
掲載年月日:2018年12月12日