当社は、皮膚科における皮膚がん等の診断に使用する機器として広く利用されているダーモスコープを販売する会社です。従来のダーモスコープは観察が主体でありますが、当社はデジタルカメラに接続し、皮膚表面や真皮部、カルテ等も連続して撮影することにより個々の患者の患部写真等が連番で記録されるため、写真の取り違えが防止でき、写真の管理が簡単なデジタルカメラ一体型ダーモスコープを提供しています。ダーモスコープについては自社で設計・開発を行うとともに、各地の医療器具の展示会に出展し、来られる医師の方へのプレゼンテーションを通じて、新たな改良や新商品開発を進めることのできる企業です。
自社製品のダーモスコープはデジタルカメラと、検査モジュールとを新規に考案した磁石による固定できるシステムとし、カメラ本体と、検査モジュールの交換が容易となる構造です。検査モジュールの形状を円錐形とし、皮膚に接触するアダプタを使用することで診断する患部の血流観察や皮膚表面反射と、皮膚内部からの真皮反射とをワンタッチ操作で切替え、患部の観察位置や角度を変えず、高い観察精度を有する世界で唯一のダーモスコープを提供しています。現在までに3件の国内特許出願及び1件の国際出願を行っており、医師の意見を展示会等で収集し、その意見を生かした新規ダーモスコープの開発を続けています。
従来の主力商品は、デジタルカメラに検査モジュールを装着し、患部にジェルを塗布して観察するタイプでしたが、昨年度、円偏光フィルターを回転するという簡単な操作で、円偏光フィルターを光アイソレータとして機能させることに成功し、患部からデジタルダーモスコープを離すことなく(同じ患部)、表皮及び真皮の2種類の観察ができ、画像として記録できるタイプを販売しています。観察感度も従来製品比約 1000 倍であり、臨床に携わる医師からも好評を得ています。
既に販売を開始していたダーモスコープに、取り付ける新規アダプタについて特許出願したいという相談が最初です。自社の技術を権利化する必要があると認識して、相談窓口を訪問されました。
ダーモスコープ部とデジタルカメラとを合体させた、アダプタ出願相談が最初です。
脱着を容易とするため、カメラのマウント部と同じ構造を採用し、確実な固定を行うため、ネオジウム形磁石を複数個用いる等の工夫があり、実用上有効であろうと判断できました。請求の範囲と図面を用意されてきており、具体的な構造と効果が明確になった説明をしてもらいました。
その後、展示会等での医師の意見を取り入れ、円偏光フィルターとLED 照明との組み合わせたダーモスコープを設計・開発し、特許出願(PCT 国際出願を含む)を行われました。
また、医師の希望もあり、40?100倍程度の顕微ダーモスコープの開発を進められています。さらには、ダーモスコープ画面でのスケール付与等、新たな製品開発を精力的に行われています。
当初は特許出願を目的としていましたが、その後は新商品のアイディアを元に、製品のブラッシュアップや特許請求の範囲の考え方等をマスターされ、いい発明をいい製品に結びつけられるようになりました。
PCT 国際出願も経験され、中小企業知的財産活動支援事業費補助金の申請等を通して、当相談窓口と神奈川産業振興センターの各部署を活用できるようになったと思います。
企業を発展させる上で商品の知財化は不可欠であり、特許は生命線です。特許を取得できた商品販売により、前年比約80%売り上げアップを達成できました。特許相談の過程で、アイディアの価値や今後の課題等キーポイントがはっきりさせることができ、思考を整理することに大変役に立つと思います。知財総合支援窓口の支援を受けると、次の特許のアイディアや製品の権利取得にも繋がると思います。
新商品を考えて、新しい特許出願につなげていくという、良い意味でのサイクルを回すことにより、順調に売上を伸ばすようになってます。デジタルカメ ラの供給等、不安定要素はあるとしても、特許を商品の拡販にうまくつなげていけていると思います。今後は世界のマーケットに打って出れるよう頑張って欲しいと思います。 (広島 政広)
新規開発ダーモスコープに対する知財支援(281.3 KB)
掲載年月日:2019年1月15日