当社は、2015年に放射線管理と技術支援を主として設立した会社です。事業内容は、医療法施行規則及び厚生労働省薬局長通知医薬発188 号に基づく測定並びに獣医療法施行規則などに基づく測定です。「医療・獣医療の放射線測定や環境モニタリング、危機の管理や更新」を通じ、安全と安心な放射線環境づくりをお手伝いしています。なお、これら一連の測定は、関連する法律「労働安全衛生法」「電離放射線障害防止規則」「作業環境測定法」にも準拠しています。
放射線の漏洩、散乱線測定等は法律で定められており、事業者は必ず実施しなければなりません。当社は、放射線測定等を実施できる鳥取県内唯一の企業であり、以下の測定業務が可能です。
① 漏洩線及び散乱線量測定:医療法施行規則で定める放射線障害が発生する恐れのある場所の測定、獣医療法で定める X 線診療室の測定。
② 構造設備に関する遮蔽算定:医療法施行規則で定める X 線装置の届出。
③ 放射線作業環境測定:作業環境測定及びその結果に基づく助言。
④ 放射線作業環境の設計:レントゲン室、検診車の設計。
胃のX線検診においては、様々な胃形状タイプに応じて精度の高いX線画像を得ることが肝要です。検査精度を上げるために「胃Makra」を開発しました。標準化された数種類のタイプのクッションを組み合わせた「胃Makra」を検診台と身体の間に挿入することにより、撮影に適した胃形状が確保でき、胃壁面のX線画像の向上が図れます。検査時間が短 縮でき、痛くも無く、受診者と撮影技師に優しい簡単圧迫マクラとして好評を得ています。医療過誤対策にも最適です。
大手企業の附属病院で放射線技師を長年勤められた後、創業された同社代表は、予てより胃のX線撮影の際の補助具及びその使用法が、X線撮影技師の技量のみに依存していることに疑問を持たれていました。そのような中で「標準化されたX線撮影の補助具」の必要性に思い至り、プロトタイプを製作され、その知財相談・商品化の為に知財総合支援窓口を訪問されました。
最初は、X線撮影の補助具である「胃Makra」の、特許出願に係る相談です。知的財産の制度概要をご説明し、技術内容に関し意見交換する中で、当該商品の技術思想が優れていることに気付かれ、当窓口担当より、新商品として販売する前に商品を更にブラッシュアップすることをお勧めしました。また、申請された「鳥取県中小企業調査・研究開発支援補助金」の交付も決定し、新たなプロトタイプの製作に着手されました。
専門家(弁理士)の助言を得ながら数度にわたり発明発掘を図り、形状・材質を工夫し特徴ある商品に仕上げられ、特許出願されました。その後、無事権利化に至っています(特許第6367457 号)。さらに、商品名称「胃Makra」の商標登録出願に係る相談もいただき、制度説明や先行商標調査の支援を経て、出願を行われました。
同社代表は、自身が保有する、医療現場で培われた経験と専門性の高いX線撮影技術を基盤とし、当窓口担当との相談を通じ商品の特徴・強みを磨き上げ、デファクトスタンダードを目指すまでに高められました。
この「胃Makra」は地方紙に取り上げられ、また、大手メーカの目に留まり全国販売を開始される等、軌道に乗り始めています。
胃の検診は、X線による検査よりも胃カメラによる検査を推奨されています。しかし、現実は、国内 の人・設備に限りがあることから、全ての受診者を胃カメラで検査することは能力的に出来ません。今般当社が開発した「胃Makra」を活用すれば、胃X線撮影の画像精度を格段に向上させることが出来ます。当社商品を通じて社会に貢献していきたいと思っています。
同社は設立して未だ間もない企業ですが、当窓口を通じて商品をブラッシュアップされた上で、特許を取得され、全国販売の緒についた成功例のひとつであります。今後の同社の発展を願うと同時に、必要に応じ、今後もご支援をしていきたいと考えています。 (岩田 克己)
胃X線撮影補助具によるX線画像精度向上(324.2 KB)
掲載年月日:2019年6月26日