当社は、1897 年の創業から120 年余り、ニット製品縫製加工を続けて、ニット製品の販売やOEM生産を続けてきました。
近年では、EM 処理(注)健康衣料品、藍染製品、藍の食品(藍の茶葉、藍の茎茶、藍の葉入りそうめん)の製造販売も行っています。
高品質、高付加価値商品を提供するメーカーとして、求められる商品を具現化する生産工場として、必ずや皆様のご期待に応えさせていただけることと確信いたしております。
(注)EM(Effective Microorganisms)処理は、光合成細菌、酵母、乳酸菌などを含む約80 種類の善玉菌で、ニット生地を処理します。
当社は、ニット製品の縫製工場として、生地の裁断、縫製、熱セット、パッケージ、検査の各工程を経て、生産・品質管理体制の下、商品を完成させています。また、地元徳島の伝統文化でもあり自然にも人体にも優しい天然藍染めを取り入れたオリジナル商品(右写真の藍染め商品)など、若者からお年寄り、またベビー・マタニティまで幅広い層に役立つ品々を取り扱っております。
無農薬農法で得られた藍を原料に藍染料の生産技術や染色方法を確立し、安全性の高い藍染め製品を供給することができるのが、当社の強みとなっています。
当社独自の栽培方法により得られた藍を使った食品もオンラインショップ等で販売しています。「海部藍(あまべあい)」の商品名で、藍の種茶(右写真)、藍の茎茶、藍の葉を使ったそうめんなどがあります。
商標登録第5455509 号、第6063112 号を取得しています。
地元の商工会より、栽培した藍を原料とした商品を開発している同社を紹介され、訪問して知財総合支援窓口の支援メニューの紹介や知的財産の概要説明を行いました。
平成21 年に地域イノベーション創出事業に参画して、地域の特色である温暖な土地に無農薬で栽培した藍を原料とした染料を開発しました。更に開発技術を追求して、優れた商品を開発することができました。染色の際に薬品を一切使わず、環境に優しく、安全で肌に優しい製品造りをコンセプトとし、家庭や学校でも染色することができるようにキットの状態で販売します。この技術を知財で守りたいというのが最初の相談でした。
藍を原料とした技術を対象としているため、化学分野に精通している専門家(弁理士)を派遣して支援を行い、明細書に記載する実験データをまとめることとなりました。その後、特許登録のためには、生産条件の権利範囲を特定して、狭い範囲の製法特許とする必要があるとの、専門家(弁理士)からのアドバイスがありました。そこで、オープン&クローズ戦略を紹介し、特許出願して情報を公開するよりも、組成がわかりにくい商品であるので、クローズ戦略として秘匿化を図ることを提案しました。
そして、これを営業秘密として守るためにINPIT 知財戦略アドバイザーと連携を行い、社内セミナーを開催しました。また、開発により得られた技術情報は、先使用権確保のために公証人役場で確定日付を確保することができました。加えて、商標登録出願の支援も行いました。
当初は、特許を取得する戦略で進んでいましたが、営業秘密で技術情報を守ることとなり、新規商品を扱う同社のチームメンバー達の技術情報を扱う意識を変えることができました。この結果、開示しても良い情報と秘密情報を明確に分けることができ、チームメンバーが安心して藍染体験のユーザーに対応することができるようになりました。
徳島県には、伝統のある「すくも藍」が有名ですが、昨年、同社の「海部(あまべ)藍」が、徳島県の藍として認められ、販売開始に大きく前進することができました。今シーズンより、要望のあった顧客にだけ染料キットを販売する方式でスタートする予定です。特許権で守る代わりに、営業秘密として守る方針を立てられたため、安心して販売をすることができます。
開発のチームリーダーの同社専務は、藍に対して強い情熱を持たれ、自ら商品開発や染色試験を行い、今回の開発に繋がったと思われます。専務のフェイスブックを見ることで、日頃の藍についての活動を知ることができました。 (井上 修)
「海部藍の藍染めキット」のクローズド戦略支援(455.6 KB)
掲載年月日:2019年8月 5日