当社は昭和34年に小さな町工場としてスタートしました。大きく成長するきっかけとなったのは、昭和49年に開発した「自動給茶装置付き寿司コンベア」でした。コンベアと自動給茶装置をドッキングさせたこのシステムは、日本の伝統的な食文化である寿司に革命的な価格と価値をもたらしました。以降、回転寿司は急速に発展し、その中で多様なニーズが生まれました。早くから製販分離体制を敷いていた石野グループでは、お客様の要望を的確にキャッチし、他社に先駆けてさまざまな機器を提案して回転寿業界の発展に貢献してきました。またこの組織力を駆使して、広く外食産業を対象とした食品加工機械の開発も手掛けるようになりました。
お客様は何を求めているか、現場にどんなニーズがあるのか。技術力と発想力を両輪とするものづくりが、私たちの「初心」です。これを実践するため、私たちは現在、『石野製作所』『北日本カコー』『石野産業』の3社によるグループ体制で、お客様によりきめ細やかで迅速なソリューションを提供しています。
食に対するニーズはますます多様化しています。石野グループでは、創業から続く愚直なものづくりの志に、半世紀を超えて蓄積されたノウハウを重ね、お客様とともに新たな価値創造に挑戦しています。
一押し商品は『オートウェイター』です。厨房から客席に向かってオートウェイターが設けられており、お客様からの注文品をオートウェイターに載せ、タッチパネルの注文客席番を押すと搬送ベルトが動き、客席まで素早く届けることができます。搬送中でも次のお料理が予約でき、お客様が搬送トレーから商品を取り出す手間が省けるようになりました。
注文から短時間でお客様に新鮮な美味しさを届けることが可能になり、楽しい食事のひとときをすごしていただけます。
同社は、海外で日本食文化が根づいている国へ回転寿司コンベアシステムを輸出する海外展開を考えられていました。そして国際展示会や外国万博での出展等を計画されていました。食品機器メーカーとして無防備に出展すると、模倣の誘発や企業技術の流出の恐れがあり、産業財産権を外国で取得し、防御しながら海外市場を開拓する必要性を感じられていました。
まず、当窓口の支援内容を説明しました。その後、支援内容の中には、特許庁が行っている中小企業等外国出願支援事業がある事を説明しました。国際展示会への製品の出展を年内に控えており、国内特許出願を優先権主張してPCT国際出願を行い、出展前に自社技術を防御する事をアドバイスしました。
その後も海外展開を視野に入れて、中小企業等外国出願支援事業を利用して2件の特許を計8カ国に外国出願されました。順次権利化が進み、4カ国に輸出を行われました。また、Oishii JAPAN 2014(シンガポール共和国)やミラノ万博(イタリア)に出展されました。
同社は、地域経済の中心的な担い手である地域未来牽引企業に選出されました。売上額は近年右肩上りで増加し、平成30年3月期では過去最高の売上高を更新されました。海外展開の更なる拡大を視野に入れ、外国での特許権、意匠権、商標権の取得を進めて自社技術の保護や自社ブランドのイメージアップを行っていきたいと考えられています。
食品機器メーカーとして、これまでに無かった新しいアイデアやデザインを付加して商品開発を行っています。技術は特許権で保護し、機器のデザインは意匠権で保護し、商品名やブランドは商標権で保護しています。海外でも、産業財産権を取得して販売促進に繋げたいと考えています。
当窓口では知的財産権に関する国内、海外の相談を受け付けていますので、ご相談下さい。本件では海外進出において、自社技術を保護しながら市場開拓する海外展開の事例について紹介しました。 (島田 隆)
回転寿司の海外知財戦略(360.4 KB)
掲載年月日:2019年10月28日