当社は、古来より港町として発展してきた石巻で「珈琲工房いしかわ」を経営しています。「毎日飲みたい美味しい珈琲」をモットーに、各種珈琲豆の焙煎を行い、異なる風味の珈琲の販売や店舗内の喫茶スペースでの珈琲の提供を行っています。当社が販売するドリップパックの商品には、地元に密着した地名等の名前を付けて、愛着の持てる商品展開を行っています。また、珈琲以外にも当社オリジナルの菓子類の販売も行っており、昔から地元で愛されてきた「かきあめ」の復活販売を開始しました。
当社の珈琲は、自社にて焙煎直後にパッケージングすることにより、常に鮮度が高い状態で販売しています。また、珈琲豆の品種に応じて細かく焙煎条件を調整して、様々な味のバリエーションを持つ当社オリジナルの珈琲を提供しています。このような味へのこだわりが当社の強みです。当社は珈琲以外にも菓子類の販売も行っておりますが、地元で昔から親しまれてきた「かきあめ」の復活を願う声を巷でしばしば耳にするにつれ、自分が一肌脱いで再びかきあめを販売し、地域を盛り上げようと決心しました。
石巻のソウルフードとして長年親しまれてきた「かきあめ」(商標登録第1414940号、同第2124977号)が誕生したのは100年も前ですが、東日本大震災でその生産は途絶えてしまいました。地域の復興とともに「かきあめ」の復活を願い、商標権移転を完了した後、本格的に昔ながらの味を再現した「かきあめ」の開発に着手し、販売に至りました。飴のベースに味の肝となる三陸産の牡蠣エキスを加え、地元産の金華塩で味を調えて作りました。また、昔の味を知る年配の方々に何度も試食をして頂きました。その結果、不純物完全無添加の製法にこだわった素朴で懐かしい歴史を受け継ぐ味の再現に成功しました。
現在では、地元石巻はもちろん、仙台駅売店での販売も好調です。
かねてより同社代表は、地元の様々な地域名を冠したドリップパック珈琲を販売しており、購入者からも好評を得ていましたが、新たな商品のドリップパック珈琲を販売するにあたり、考えた名称が従来のように地名を含む名前ではあるが、色彩やデザインを考慮したパッケージであるため、商標登録が可能かどうかを相談したいとのことで当窓口を尋ねられました。
新たなドリップパック珈琲の商標登録の可能性を確認するために、J-PlatPatによる類似商標調査の仕方やインターネット上で検索される類似名称の周知性等について助言や支援を行いました。その後、出願書類の作成支援を行い、出願から登録まで恙なく進めることができました。更に、2件目の商標の出願を行ったのですが、拒絶理由通知を受けたため、その対応として意見書作成等について支援しました。
その後、石巻のソウルフードである「かきあめ」の生産が途絶えてしまったことを知った同社社長は再販することを決意されました。「かきあめ」を復活させて販売するには、まず、他者が保有する「かきあめ」に関する商標権の実施権が必須となるため、その権利の使用許諾や譲渡について支援しました。商標権者は事業再開の目途が立たない状態であったので、商標権の譲受を提案し、専門家(弁理士)派遣も利用しながら、商標権の移転登録に関わる支援を行いました。無事商標権の移転が完了してからは、「かきあめ」の製造や販路開拓等について、商工会やよろず支援拠点等の連携機関も支援に加わりました。
発売から5ヶ月に5個入袋で3万袋を販売し、相乗効果で主力のコーヒー販売も好調で企業売り上げは前年同期比を更新しました。
事業を行う上で、商標の重要性を認識するとともに、ブランド戦略も併せて考えるようになり、地域復興の一助にもなることを自覚したようです。もともと企画力に優れた同社代表であるので、多方面の業種とコラボレーションしたり、様々な商品展開を考え実施する上で、常に商標を意識するようになりました。
知財総合支援窓口の支援を受け、石巻の地域ブランドである「かきあめ」の商標権の譲受に成功したことにより、当社が独占して「かきあめ」を販売することが可能になり、「かきあめ」が当社の売り上げに占める割合も増加しております。地元の人達が「かきあめ」の再販をいかに待ち望んでいたかを改めて認識するとともに、ブランド力の大きさに驚いています。過去の創始者から引き継いだ商標ではありますが、末永くこのブランドを大事にしていきたいと考えております。
地元愛旺盛な同社代表の行動力や幅広いネットワークがあったからこそ、滞りなく商標権の譲渡に成功したと思います。今後は、外国人向けのパンフレットも準備したとのことであり、地元地域に留まらず、全国そして海外への販路も確立していただきたいと思います。 (森 一英)
石巻銘菓「かきあめ」のブランド復活支援(469.7 KB)
掲載年月日:2019年11月 8日