当社は、自社農園などで栽培したリンゴ・ぶどうを使い、シードル(cider)・ワイン(wine)を生産するために、果樹農家、醸造担当、営業担当の4人で2018年に創設しました。中央アルプスと南アルプスに囲まれた自然豊かな南信州松川町にあります。
現在販売している「VinVieシードル」は、農産物の六次産業化を目指して2018年に独自開発し、7種のリンゴと洋ナシを使ったシードルなどを全国に販売しています。
現在は近隣の醸造所に委託醸造していますが、2020年には自社の醸造所を開設する準備を進め、自家醸造を目指しています。
標高720メートルにある自社農園は、昼夜の気温差が大きく、果物栽培に適した土地であり、減農薬栽培にも取り組みながらリンゴを生産してきました。特に“ふじ”は、たっぷりと蜜が入り、甘みと酸味のバランスが抜群なことから、VinVieシードル特有の味覚となっています。
当社は、こだわりのあるシードルの美味しさを追求するために、リンゴの栽培は、当社直営の「りんご屋たけむら」が担当しています。シードルに合った数種のリンゴをブレンドできることは、自社農園ならではの強みであり、多くの顧客から好評を得ています。
当社の一押し商品は、「VinVieシードル」です。近年、日本ではシードル生産が盛んになりつつありますが、当社は、「VinVieシードル」を核に、リンゴとシードルの魅力を発信したり、オリジナルのシードルをプロデュースしています。
「VinVieシードル」は、2018年「Japan Cider and Perry Awards」のブロンズ賞、「ジャパンシードルアワード2018」DRY部門の2つ星 ★★を獲得しています。また、世界で初めて開発した、ハチから抽出した酵母(ハチ酵母:Lachancea Thermotoloerans)を使い、独特の「VinVieシードル」ができました。
株式会社VinVieの前身である「りんご屋たけむら」の時代に、2014年に開発した最初のシードルのネーミングについて、商工会議所の担当者の勧めもあって、商標登録出願の相談に来訪されたのがきっかけでした。
「りんご屋たけむら」では、シードル(新商品)を発売するにあたり、ラベル等で使う自社のシードルのネーミングについて、発売前に商標を出願しておきたいとの意向から、商標の出願方法を教えてほしいとの相談がありました。先行商標の調査方法や出願書類の作成等を支援し、無事登録に至りました(商標登録第5748236号)。
その後、「株式会社VinVie」を設立することを決意し、この「VinVie」の社名及び主力となるシードルの銘柄についても、公表する前に商標を出願することになり、“VinVie”のいわれを聞きながら、先行商標調査結果を踏まえ、商標権を取得可能なように一部アレンジした結果、“VinVie”の商標権が会社設立前に登録されました(商標登録第5996284号)。
新たにプロデュースされるシードルについても、事前に商標権を取得するための相談があり、現在でも、2020年度にリリース予定のシードルの銘柄についても、既に商標権を取得しています。
このように、新商品を市場に出す前から権利化を行う意識をもたれ、積極的にブランド化を進められています。
最近は、農産品の六次産業化に向けて、新規のシードルメーカーが参入しており、無断で商標権を使用するメーカーも現れましたが、取得済みの商標権により商標使用を止めることができ、権利保護の重要性を実感されています。
当社は、設立して1年余りの新会社ですが、前身である「りんご屋たけむら」のときから、商標権を取得する重要性を理解させてもらったうえに、出願から権利化に至る支援をしてもらい、株式会社VinVieの礎になりました。
従来は、農家にとって、知的財産は関係ないものと考えていましたが、六次産業化を目指すとき、知的財産による商品の保護は重要であることを知ってもらいたいと思います。
近年、各地で農産品の六次産業化が進んでいます。特に農家は、知的財産は無縁と思われていますが、特産品などのブランド化を図るうえで、知的財産は重要な武器になります。株式会社VinVieのように、特に、農産品を使用してブランド化を図るうえで、商標権を活用してもらいたいと考えます。 (富澤 正)
果樹農家の商標権活用による六次産業化(326.8 KB)
掲載年月日:2019年12月24日